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2019年11月21日 (木)

貴重な増幅素子SIT搭載!First Watt『 SIT-3 』の魅力を探る。~ 限定生産品:世界200台、国内30台 あと僅か! ~

ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回ご紹介します『 SIT-3 』は、First Watt専用の《SIT》出力素子(別名V-FET)パワートランジスターを使用したシングルエンド・シングルステージ純A級の最新パワーアンプです。超シンプル・高品質・低出力・ハンドメイドのこれまでの「SIT-1」「SIT-2」の設計思想と構造を受け継ぎながら、《SIT》出力素子の新たな可能性を追及したのです。



■ 米国のブランド First Watt(ファーストワット)とは

First Watt(ファーストワット)は、Pass Laboratories(パス・ラボラトリー)の創設者ネルソン・パス氏によるハンドメイド製品の米国ブランドで、彼のリタイアにあたって立ち上げたプライベートブランドでもあります。同社は、実効能率の高い高品質のスピーカーのために、非常にシンプルな回路構成のAクラス動作を採用した低出力オーディオアンプの開発を目指し、2005年に創立されました。これはパス・ラボ時代とは真逆のコンセプトです。

「増幅コンポーネントとしてのオーディオアンプはどうあるべきか。」その命題について実験を重ねたといいます。結論として、自然界におけるシングルエンド動作、理想的なアンプの増幅動作を達成するためには、三極真空管シングルアンプの音質だとしたのです。その魅力を半導体アンプで実現しようとFirst Wattは試みているのです。

また、「First Wattで最も重要視しているのは最初の1ワット」だともいいます。それは「1ワットでうんざりするような音が聞こえたら、500ワットのアンプの音を誰が聞きたいと思いますか?」との疑問から出た言葉だそうです。そうして、音質を最重視し、他に類を見ない低出力アンプで、しかもフィードバックがなく、単純なA級回路とすることで非常に高品位な音質を実現でき、高出力アンプに比べて多くのメリットのあるアンプが完成したのです。


■ Static Induction Transistor(SIT)とは

まずは《SIT》の説明から、和名は「静電誘導トランジスタ」、英語名「Static Induction Transistor(SIT))」といい、高周波特性を改善した電力用半導体素子です。FET(電界効果トランジスタ)の一種で、1950年かの有名な東北大学の故 西澤教授によって開発されました。静電誘導効果により3極真空管型の特性が得られ、高速・低損失の高忠実度増幅を可能にしたのでした。

私が初めて《SIT》という名前を知ったのは、1974年ヤマハが発表したパワーアンプ「B-1」でした。当時ヤマハは自社で半導体を作っており縦型FET(V-FET)といわれていました。ドライブ及びパワー段など随所に縦型FETを組み合わせて回路を構成していました。出力150W+150Wで消費電力440W、重量37kgという、当時としては超弩級パワーアンプでした。

当時は怪物アンプといわれ、鉄の塊という印象の黒く無骨で、当時のヤマハのプリメインアンプ「CA-1000」や、プリアンプ「C-2」などの優雅なデザインとは全く対照的でした。純正の《SIT》「2SK77」は、現在入手は全く不可能とのことで、修理は殆どできないといわれています。現時点では国内外を問わず《SIT》を作っている所はなく、供給も不可能とのことです。


■ 入手不可能なはずの《SIT》を導入した新製品『 SIT-3 』
その入手不可能のはずの《SIT》をFirst Wattの新製品『 SIT-3 』に使われているのは、どういう訳なのでしょうか。輸入元:エレクトリの小野氏にお話を聞きました。本機に使われている《SIT》デバイスは、「SIT-1」の設計にあたって、ネルソン・パス氏が大金を投資して、SemiSouthとPASSの共同開発で《PASS SIT》としてデザインされたといいます。

その特注の《SIT》デバイスの在庫が少なくなり、新たに製造ができない(発注数の単位が数千~数万個)ため、この『 SIT-3 』に使う分と、過去の製品を含めてのメンテナンス用を確保するため、世界200台、国内30台の限定生産になったとのことでした。

《SIT》素子は歩留まりが悪く、ネルソン・パス氏が望むレベルだと100個の内、数個しか合格しないのだといいます。よって『 SIT-3 』は最後の、そして非常に貴重な《SIT》搭載アンプとなってしまったのです。

『 SIT-3 』には「SIT-1」「SIT-2」と《SIT》出力素子の使い方に大きな違いがあるといいます。「SIT-1」「SIT-2」では《SIT》素子はソース接地で動作し電圧と電流の両方が増幅されるのに対し、『 SIT-3 』ではドレイン接地することで電流のみが増幅されます。

これこそ『 SIT-3 』最大のトピックで、ネルソン・パス氏が考案した《DEF回路》という新回路です。《SIT》素子を出力回路のNチャンネルに、そして厳選したMOS-FETをPチャンネルに使うという斬新な回路で、電圧は高品質ステップアップトランス(入力トランス)によって増幅されるという画期的なものです。

《SIT》素子は、どちらの方法でもフィードバックなしに適確に増幅動作を行いますが、ドレイン接地においては、より低歪み、低ノイズ、高ダンピングファクターが得られます。その代わり入力トランスが必要にはなりますが、同社は得られる音質向上に比べれば、妥協可能な小さな要素としています。増幅と二次高調波をはるかに低い歪み値で制御できるのです。


■ 『 SIT-3 』のサウンドは

サウンドについては、筆者が以前試聴した同社のステレオパワーアンプ「F7」(20W+20W 、JFET & Mos-FET)との違いを中心に、前出の小野氏にお伺いしました。

「F7」は、非常に透明度が高く、しなやかなサウンドで、楽器の倍音成分の再現性が真空管アンプのように柔らかく豊かでした。特に女性ボーカルとの相性は抜群で、声の瑞々しさや滑らかさは抜群でした。あらゆるソースに対してナチュラルかつ素直な立ち上がりと正確な音色の再現性は、余計なものが加わっていない、原音そのものを聴かせてくれていると感じたものでした。

『 SIT-3 』は、更に歪み感のない澄み切った、とにかくフラットでどこにも強調感のないサウンドだといいます。ボーカルは「F7」にも増して生音のごとく温かく、柔らかな心地良さだといいます。特に女声ボーカルの艶っぽさ、しっとり感は「F7」を上回るとしています。

また、とても18Wのパワーとは思えない力強さと立ち上がりの良さも兼ね備えており、特にピアノの滲みの無さは過去に経験のないレベルだとのことです。特に、耳障りになりがちな高域にも硬質感が全くなく、全ての帯域で質感や音色、響きなどに統一感のある、過去に例のない珍しいアンプだとしています。

確かに、本機はたったの18Wとパワーは大きくないため、小型の超低能率スピーカーでは、その真価を十分発揮できないかもしれません。しかし、スペック以上の駆動力が備わっているため、余程の大音量を要求しない限りパワー不足を感じることはないともしています。

しかし、こんな考えをお持ちの方には、本機をお勧めできません…。
  • オーディオは、部品や筐体に物量を投入しないと良い音は出せない。
  • アンプはパワーが重要で、スピーカーをねじ伏せてこそ、良い音が得られる。
  • アンプの部品が少なく、中味が空気だけのアンプで、良い音が出るはずがない。
  • デザインに凝ったアンプこそ、高級機である。
  • 海外製アンプは、なんだか信用できない。
  • 大音量再生こそがオーディオの魅力である。

■ 最後に

ハード指向ではなく、とにかく音楽の奥深さをとことん楽しみたい、超自然なサウンドで、サウンドステージが非常に広く、ナチュラルな響きなど、生の演奏やボーカルが持っている臨場感を自宅で再現したい方にこそ、『 SIT-3 』をお勧めしたいと思います。

重厚長大、超高価格のオーディオ機器に話題が集中しがちな昨今ですが、海外製としては比較的低価格のFirst Watt『 SIT-3 』の存在こそが、米国のオーディオ産業の懐の深さを感じさせてくれます。

ただ惜しむらくは『 SIT-3 』が限定生産(日本国内30台)ということです。 前述のようなサウンドを理想と惚れ込んだ方は、一刻も早い決断をお願いします。
(あさやん)


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