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2019年6月 4日 (火)

TEACの「とんがった」製品を一挙にご紹介♪

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回は私が選ぶ、TEACの回転系オーディオ機器(アナログプレーヤーなど)の「とんがった」製品を一挙にご紹介いたします。


■ TEAC(ティアック)について
TEACは1953年(昭和28年)に、東京テレビ音響株式会社として設立。1964年に、ティアック株式会社として発足しました。

私が本格的にオーディオをやり始めた1970年代。まずは、カセットデッキの平型「A-350」、続いて「A-450」、さらにオープンリールデッキは2トラ38の「A-3300-2T」を購入。当時、AKAIと覇を競っていた録音機メーカーでしたが、私は迷わずTEAC製品を選んだのでした。

同社は創業当時から回転系にはめっぽう強く、1957年に開発されたオープンデッキの原器「TD-102」から、同社の歴史が始まっています。

1968年には国産初のカセットデッキ「A-20」、1973年にはマグネフロートのダイレクトドライブターンテーブル「TN-400」、1997年にはMDデッキ「MD-10」を発売。そして、CDプレーヤーについては、ESOTERICの「Grandioso P1X + D1X」を始め、TEAC/ESOTERICは、今や世界中の誰もが認めるトップブランドとなったのです。

その回転系に強いTEACは、同業他社が相次いで生産から撤退していく中にあって、我々オーディオファイルにとっては非常に有り難く、また心強いメーカーでもあります。そのTEACの回転系の「とんがった」アイテムで、今となっては「超希少」となりつつある製品群を、改めて一挙にご紹介します。

■ ダイレクトドライブ・アナログターンテーブル『 TN-4D 』

(カラー:ウォルナット)

型番からも前述の「TN-400」を意識しているのは明らかです。ベルトドライブが主流の現在において、本機のために薄型のダイレクトドライブモーターを新開発するという、並々ならぬ決意が感じられます。

しかも、従来のDD方式ターンテーブルでは望めなかった、高さ117mm(ダストカバーを閉めた状態)のスタイリッシュな薄型ボディも実現しています。

トーンアームにも大いにこだわりを見せており、高級トーンアームブランド SAEC(サエク)とコラボレーションして、SAECお得意の可動部にナイフエッジ機構を採用したスタティックバランス型S字トーンアームを搭載。一般的なベアリングによる可動方式に比べ、支点が明確で初動感度が高く、分解能の高いダイナミックなサウンドを目指したとしています。もちろんユニバーサルタイプで、お好みのヘッドシェルやカートリッジへの交換も容易です。

さらに、カートリッジもこだわっており、アメリカで40年の歴史を持つカートリッジブランド SUMIKO のMMカートリッジ「Oyster」(単体で1万円超)を付属しています。

そして、当然賛否は分かれるところですが、現状フォノイコ非搭載のアンプが多いことや、アナログレコードのデジタルファイル化が盛んな中にあって、今風のフィーチャーも避けて通れなかったのでしょう。それは、ON/OFF可能なMMカートリッジ対応フォノイコライザーアンプと、USBのデジタル出力(最大16bit/48kHz)を装備していることです。

キャビネットは高密度MDFをコア材に用い、衝撃吸収性能に優れたインシュレーターを直に固定しています。外装仕上げは多層塗りピアノブラックと天然ウォルナット突き板仕上げの2バージョンが用意されています。

出力は直出しではなく、付属のRCAケーブルを使用するタイプで、将来のケーブルのグレードアップも可能です。

サウンドは「Oyster」のパワフルな中低域に、SAECらしい反応の良い高域が乗った本格的なもので、当面これで十分レコード再生が楽しめると思います。ただ、内蔵フォノイコの限界を感じる可能性もあることから、将来的にはアンプ内蔵のフォノイコなどをお使いになることをお勧めしておきます。

■ ハイレゾ・マスターレコーダー『 SD-500HR 』


アナログレコードやカセットテープなどの貴重なアナログ資産をハイレゾデジタルファイルとしてアーカイブ化できる、最大DSD:5.6MHz、PCM:192kHz/24bit対応のハイレゾ・マスターレコーダー。

音源保管に記憶容量あたりの価格が手ごろなSDHC/SDXCカードや、接点不良の少ないCFカードに直接録音が可能で、カセットテープ感覚でメディアの交換が可能です。

SDカードなどに保存されたデジタル音楽ファイルは、そのままパソコンに取り込むことはもちろん、無料のハイレゾ音源波形編集ソフト「TEAC Hi-Res Editor」(Windows/Mac版)を使って、必要に応じて曲ごとの分割やファイルフォーマット変換などの処理が可能です。

様々な録音レベル状態にあるレコードやカセットテープから適切なレベルでデジタル録音できるよう、24ドットLEDレベルメーターを確認しながら、0.5dBステップの細かい録音レベルの設定が可能で、スマホやカーオーディオなどのソフト作りも可能です。

左右各チャンネルの信号を完全に分離して処理するデュアル・モノーラル回路設計により、左右チャンネル間の干渉やノイズを抑えたピュアな信号処理を実現する高音質設計を採用。さらに、デジタル処理の要となる内部クロックには高精度なTCXOを採用しており、高精度な外部クロックからの信号を入力できるワード入力も装備しています。

アナログ入出力はXLRとRCA各1系統、デジタル入出力は同軸とAES/EBU各1系統に加え、BNCまで装備しており、ハイエンド機器はもちろん、プロオーディオ機器との接続も可能な本格仕様となっています。

手軽な録音機が欲しいオーディオファイルはまだまだ多いはずです。カセットデッキに替わる新しい形のハイレゾレコーダーです。パソコンが不要なのが、最大のメリットです。

■ CDプレーヤー/MDデッキ『 MD-70CD 』


現在国内で入手できるMD(ミニディスク)の録再機器は、おそらく本機だけだと思います。もはやMDは過去のフォーマットであり、元々SONY(1992年発売)を中心に、ほぼ日本国内だけで流通しており、2011年には一部のミニコンポを除いて、市場から撤退してしまいました。

本機は、独立駆動するCDプレーヤー部とMDデッキ部とのコンビネーションデッキで、独立してCDの出力とMDの入出力が可能で、連続再生やCDからMDへのダビングなども可能です。(CDレコーダーではないためCD-R等への録音はできません)

MDレコーダー部は、LP2、LP4のロングプレーモードもサポートしています。

アナログ入出力および同軸、光デジタル入出力を装備しており、様々なシステムと柔軟に組み合わせて使用できます。

過去に録りためたMDをもう一度聴いてみたい方やMDのアーカイブとしては、おそらく最後のMD対応機だと思います。非常に貴重な製品です。

■ ダブルカセットデッキ『 W-1200 』


こちらも、現存する唯一のダブルカセットデッキです。

ワンウェイ(片道走行)カセットメカを録音・再生が可能な2基搭載したダブルデッキ(ダビング、同時録音可能)に、マイクミキシング機能やUSBデジタル出力を備えた多機能なカセットデッキです。

レコードとともにアナログ音源の温もりや柔らかさが見直されているカセットテープ。本機は、デジタル時代にマッチしたインターフェースも備えており、カセットテープ・ライブラリーの忠実な再生だけでなく、カラオケ用途や会議の音声議事録のデータ化などにも対応するなど、幅広く活用できます。

さらに、リアパネルのUSB端子からパソコンにオーディオ信号を出力し、パソコン側でデジタル録音が可能なデジタル音声出力(最大PCM:48kHz/16bit)での録音が可能で、貴重なカセットテープの音源をデジタルアーカイブとして保存も可能です。

■ カセットデッキ/CDプレーヤー『 AD-850 』


カラオケにも使えるエコー機能付きマイク入力端子を装備。USBメモリーによる録音・再生が可能なカセットデッキとCDプレーヤーの複合機です。

もちろん、それぞれのメディア間でのダビングが可能です。(CDレコーダーではないためCD-R等への録音はできません)

■ CDレコーダー『 CD-RW890MK2 』


シンプルで使いやすい、シンクロ録音や多彩なオートトラック機能を搭載したCDレコーダー。レコード (フォノイコが必要) やカセットテープ、CD、MDなどを音楽用CD-R/RW(データ用は使用不可)に録音することができるCDレコーダーです。

■ 最後に
このようにTEACは、同社ならではの「回転系のとんがったオーディオ機器」の数々を、我々オーディオファイルに供給し続けてくれている、今となっては大変貴重なメーカーです。

なお、いずれの製品も生産台数が限られており、在庫切れを起こしてしまうケースが多いのが「玉にきず」ではありますが、私としては少々お待ちいただいてでも、ご購入されることをお勧めします。
(あさやん)

2019年5月17日 (金)

マッキントッシュの出力トランス搭載パワーアンプ『 MC312 』『 MC462 』の実力を探る!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回は、伝統のスタイルを身に纏い、8年ぶりにリニューアルしたマッキントッシュの出力トランス搭載パワーアンプ『 MC312 』『 MC462 』を取り上げます。


■ いつかはマッキン!
マッキントッシュのアンプに憧れを抱いている人、特に中高年の方には多いと思います。

かくいう私自身も「JBL4311」を使い始めた頃、当時人気の「4343」をドライブする「C28」「MC2105」の素晴らしいサウンドと、何よりプリの美しいフルグラスのイルミネーション、そしてパワーのブルーメーターの存在感に圧倒され、『 いつかはマッキン 』と夢見たものでした。

マッキントッシュは1949年、Frank H.McIntosh氏によって、米国ワシントンで創立されました。その後、現在のニューヨーク州に本拠地を移し、有名なGordon J.Gow氏とSidney Corderman氏がエンジニアに加わって、70年にも及ぶ同社の歴史の基礎を作り上げたのです。

そして、製品には恒久的な信頼性と安定性を、そのデザインには完全性と永続性を求めたのでした。

それこそが、マッキントッシュアンプの出力トランスを含む回路ポリシーと伝統的スタイルを、現在に至るまで継承させているのでしょう。

今回ご紹介します、パワーアンプ『 MC312 』『 MC462 』の2機種も、もちろんそれらを継承して製品化されています。

■ McIntosh『 MC312 』
型番の "3" が示すように、300W+300Wの大出力パワーアンプです。

2011年発売の前作「MC302」の後継機で、電源を中心に強化され、ダイナミックレンジの拡大を図っています。そのあたりを中心に見てまいりましょう。

本機には、スピーカーのインピーダンス(2~8Ω)に関わりなく、インピーダンス・マッチングが可能な出力トランス(オートフォーマー)が搭載されており、定格300Wで10Hz~100kHzという広い周波数レンジにわたって、均一な出力が取り出せます。

このため出力段素子には、電源投入時から最大パワー時までのバイアス電流を正確にコントロールするThermalTrak(サーマルトラック)トランジスタという特殊な素子を、1chあたり6パラレル・プッシュプル構成で使用しています。

このトランジスタは、一般的な足が3本の3ピンではなく5ピンで、その余分な2ピンにトランジスタの温度補償機能を持たせることで、一般的に行われるヒートシンクに外付けの温度補正デバイスを装着するのに比べ、速やかなバイアス電流補正と安定性が得られるのです。

さらに本機は、微小レベルから最大出力まで、0.005%以下という測定限界に近い、超低歪率特性を達成。

従来から、その音楽性には定評のあるアナログ音源はもちろんのこと、最先端のハイレゾ音源の再生にも十分対応できる最新スペックを、「出力トランスでの広帯域再生は難しい」という常識を覆して可能にしたのです。

その他、マッキントッシュが特許を持つパワーガードは、光の速度で入力信号を監視して調整し、アンプのオーバードライブを防止して、スピーカーが破損するほどの強烈な歪みを含むクリッピングをリアルタイムで防止します。

また、電流が安全な動作レベルを超える前に出力段を切り離し、動作条件が正常に戻ったときに自動的にリセットする、ヒューズレス短絡保護回路など、前作を踏襲しています。

前作からの見た目での大きな違いは、まず伝統的な従来のデザインを継承しつつ、McIntoshの「Mc」をあしらい、放熱効率を高めた新デザインのヒートシンクです。

そして、ピッチ(タール)を充填したトランスケース(ロの字型アルミ押し出し材とプレートがボルトで強固に固定)に収められ、シャーシ上に搭載された新型の電源トランスと出力トランスです。

これにより、トランス自体の密閉度と強度が高まり、振動抑制とメカニカル・ノイズを大幅に抑制できたとしています。結果、トランスケースに収められた電源トランスは、実に12.7kgにも達しました。

4個のフィルターコンデンサーもさらに大型化され、エネルギー容量は2倍以上となり、最新のデジタル音源が必要とするワイド&ダイナミックレンジにも余裕で対応可能な、ダイナミックヘッドルーム(定格出力を超える瞬間最大出力までの余裕)を2.3dB(前作1.8dB)に向上させたのです。

これら以外にも、特許の金メッキカスタム・スピーカー端子を2Ω、4Ω、8Ωの3組6個、設置間隔を広げてケーブル接続を容易にしています。内部配線材もより太いモノを採用し、信号伝達を一層確実なものにしているとのことです。

外観は従来の漆黒のガラスパネルや、鏡面仕上げのステンレスシャーシを継承していますが、フロントパネルのイルミネーションには広角LED(従来は狭角LEDを光ファイバーで分散)を採用して、照明の均一化を図り、より美しく仕上げられています。

■ McIntosh『 MC462 』
一方の『 MC462 』も、2011年発売の「MC452」からのモデルチェンジです。

『 MC462 』はフロントパネルに取っ手が付いて、さらにゴージャスになっており、内部も『 MC312 』とは違い、前作同様、全段完全バランス回路で構成されています。

もちろん、パワーも450W+450Wとマッキントッシュの伝統的筐体サイズのステレオパワーアンプとしては、最大級の超ハイパワーを実現しています。

本機では、バランス入力されたプラスおよびマイナスの信号(アンバランス信号は入力直後バランス信号に変換)は、完全にバランス増幅された上で、出力トランス内で結合され、出力されます。合計4つの増幅回路を持つことから、クワッド(4重)バランス回路と同社は呼んでいます。

電源トランスは新トランスケースに収められ、13.6kgに達しています。フィルターコンデンサーは前作の4個から6個になり、エネルギー容量が1.75倍に強化され、ダイナミックヘッドルームも3.0dB(前作1.8dB)に大幅に強化されています。

結果、ハイレゾ音源の高解像度、高ダイナミックレンジも忠実に再現できる実力を備えたのです。

■ 試聴結果

▲ 上「C-52」、下「MC-462」

『 MC462 』のサウンドは、展示のある日本橋1ばん館リファレンスルームで確認しました。マッキントッシュ プリアンプ「C-52」との組み合わせでの試聴です。

まず、前作「MC452」との違いを一言で言い表すと『 ガッチリ&スッキリ 』でした。

前作では、スピーカーによっては解像度が不足するケースもあり、多少大味で荒っぽさを感じることもありました。低域の迫力は十分あるものの、どうしても重心が低く鈍重になってしまう傾向もありました。

『 MC462 』は、そのハイパワーからくる力強さや骨太さは継承しつつ、低域の曇りがスッキリと晴れ、音程のしっかりしたズッシリ感で迫ってきました。中高域は当たりが良く、荒っぽさが消え、ヌケが明らかに向上しています。

低域から高域まで統一された音色で、堂々としたピラミッドバランスを実現してくれました。マッキントッシュ伝統の色合いの濃い、豊かなサウンドがグイグイと迫ってきたのです。

小音量時でも音痩せすることはなく、繊細さや静けさも前作より明らかに改善されたと感じました。その上で、大らかでゆったりした、余裕のマッキントッシュ・サウンドが聴けました。

これらの音質向上に大きく寄与したのは、何といってもピッチを充填したトランスケースに収められ、より強度を高め、振動を抑制した新型トランスの効果だと思います。

また、パワーの差とバランス回路以外は、同じポリシーで設計され、しかも100万円を切った『 MC312 』には、お買い得感さえも感じてしまいます。

音楽を心から愉しく聴かせてくれるマッキントッシュの説得力に、改めて感動させられました。

この『 見て良し、聴いて良し 』のマッキントッシュこそ、最近の価格が高騰したハイエンドの世界に一石を投じるとともに、改めてハイエンド・オーディオの醍醐味を感じさせてくれました。
(あさやん)

2019年5月10日 (金)

トップウイング(ENZO)扱いの「M2TECH」「XI AUDIO」より、大注目のデジタル機器登場!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。今回は、トップウイングが扱う「M2TECH」と「XI AUDIO」の画期的なデジタル機器2機種を取り上げます。


■ トップウイングが扱うオーディオ機器
最近、トップウイングの扱う海外ブランド製品が、次々ヒットを飛ばしています。

これは、同社代表 佐々木原氏の「目の付け所」が素晴らしいからで、いつも感心させられます。そして同社は、欧米製品に殊更こだわるわけではなく、「良いモノは良い」との考え方のもと、グローバルにアンテナを張って、話題の製品を発掘してきているのだと思います。

トップウイングの扱うピュアオーディオファンに人気のブランドは、「iFI-Audio」「M2TECH」、最近では「TELOS」、そして今回新たに「XI AUDIO(イレブンオーディオ)」が加わりました。その中から「M2TECH」と「XI AUDIO」の画期的なデジタル機器2機種をご紹介してまいります。

■ M2TECH フォノイコライザー機能搭載A/Dコンバーター『 JOPLIN MkIII 』


ハイレゾ登場以降、さまざまなフォーマットや伝送方式が次々提案されてきましたが、そんな中にあってヨーロッパ、それもイタリアに本拠地を置くM2TECHの製品は特に注目に値します。

開発者であるマルコ・マヌンタ氏は、世界的にもデジタルオーディオ界での重要人物で、そのユニークなアイデアとそれを具現化する高い技術力、そしてオーディオスタイルへの先見性には目を見張るモノがあります。

同社は、PCオーディオ黎明期、192kHz/24bit対応モデルが世の中にまだ少ない中にあって、USBメモリーサイズのUSB-DDC「HIFACE」を発売し、一躍脚光を浴びました。またマルコ・マヌンタ氏は、他のハイエンドブランドにデジタルモジュールを供給するなど、業界でその名を轟かせています。

M2TECHの考え方の基本にあるのは、ホーム・エンターテインメントのための革新的な製品を設計、製造し、販売することだそうです。

M2TECHの製品群の中でも、近年特に注目を集めているのが「Rockstarsシリーズ」で、D/Aコンバーター+プリアンプの「YOUNG MkIII」、ステレオパワーアンプの「CROSBY」、ヘッドホンアンプの「MARLEY」、フォノイコライザーの「NASH」、そして今回ご紹介しますフォノイコライザー機能搭載A/Dコンバーターの『 JOPLIN MkIII 』があり、いずれもロックスターの名が付けられ、人気製品になっています。

最新の『 JOPLIN MkIII 』は、2015年発売でフォノイコライザー・カーブの扱いに革新をもたらした「JOPLIN MkII」の後継機で、基本性能は継承しつつ、今回もあくまでA/D機能のみに特化して開発されています。その理由は、「D/Aコンバーターの選択肢を広げるため」だそうで、本機は世の中に数あるハイエンドD/Aコンバーターの実力を生かすためのソフト(アナログソースのデジタル化)を供給するための機器だという訳です。

前作ではS/PDIFやAESの仕様の制約から、USB出力はPC経由のみでしか192kHz/24bit以上のA/D変換ができませんでしたが、『 JOPLIN MkIII 』ではHDMIケーブルを用いたI2S(アイスケアエス)の採用により、PCM384KHz・768KHz、DSD256といった「超ハイレゾ」まで対応することができるようになったのです。

I2S入力を採用したD/Aコンバーターは、今の所まだ市場には多くはありませんが、M2TECHでは「Evo DAC Two Plus」、そして今回ご紹介しますXIAudio『 SagraDAC 』が同じI2S方式に対応しています。今後、USBやS/PDIFに代わってデジタル伝送の主流になる可能性も十分にあります。

そして、『 JOPLIN MkIII 』のメイン機能でもあるフォノイコライザーには、前作のLPレコード用16のカーブ、SPレコード用7つのカーブに、米国のクラシックレーベル「Bartok Records」専用カーブを加え、さらに充実(※)させたのです。
※この結果、1925年から1954年にレコードを製造していたほとんどのレーベルがカバーできました。

マルコ・マヌンタ氏は、オリジナル盤や初期盤の真の実力を正確に引き出すには、アナログ方式のカーブ補正には限界があり、100%正確な値を引き出せないと考えたのです。その結果A/Dコンバーター自体に、FPGA回路(設計者が構成を設定できる集積回路)で32Bit精度によるカーブ補正を行うフォノイコライザー機能を加えて製品化したのです。

前作からは、
  1. 入力インピーダンス設定を無段階のポテンションメーター(可変抵抗器)に
  2. より多機能なリモコンに
  3. 丸みを帯びた外装に
  4. 表示をレベルメーターつきOLEDディスプレイに
とそれぞれ変更し、グレードアップを果たしたのです。

さらに、通常のDC電源アダプターに加え、よりお買い得なオーディオ用高品位電源アダプター「iFi iPower Plus(15v)」とのセット製品『 JOPLIN MkIII & iPower Plus 』も同時に発売されました。

『 JOPLIN MkIII 』は、比較的低価格に抑えながら、曖昧さを残さない徹底したフォノカーブへの対応により、あらためてアナログレコードの真の再生のあり方を示した製品といっても過言ではありません。

レコード以外にも、カセットテープなどの豊富なテープライブラリーをデジタルアーカイブすることで、お持ちのD/Aコンバーターをさらに有効に生かせそうです。

■ XI AUDIO D/Aコンバーター《R-2Rラダー抵抗変換方式》『 SagraDAC 』【受注生産品】


XI AUDIOは、2017年にマイケル・シャオ氏によって設立されました。彼は長年、放送機器をはじめとした業務機のマネジメントを手掛け、かのナグラ・プロフェッショナルの責任者という経歴を持つ技術者です。

彼が手掛ける製品は、業務機としての質実剛健さに加え、音楽を楽しむためのエッセンスが組み込まれており、「真実の音」を表現するのが最大の目標だとしています。

XI AUDIOのアンプ(「Formula P1000」など)のボリュームは、全て11時(XI)の位置からスタートします。

これは、普通のアンプはボリューム位置がおおよそ11時よりも上で使うことを想定して設計されているのに対して、XI Audioは絞り切りでさえ、それらの性能を超えているという自信の表れだといいます。

また今回ご紹介します『 SagraDAC 』は、「サグラダック」と発音し、その名前は、マイケル・シャオ氏が感動したスペイン・バルセロナの《サグラダ・ファミリア》に由来しているそうです。

『 SagraDAC 』の最大の特徴は、前面パネルに書かれている「R-2R DAC」ということです。

「R」はRegister(抵抗)で、抵抗をラダー型に組み合わせたD/A変換部を持っていることを意味していますが、一般的には「マルチビットDAC」といわれているものです。その上で、一般的に使われるDACチップではなく、一部のハイエンド機で見られるディスクリートで組まれたDACを採用しているのです。

そのディスクリートのマルチビットDACは、デンマークのスークリス社製のもので、本機のために特注したものだそうで、0.012%精度の抵抗を216個も使用した高精度なもので、非常にコストの掛かる構成となっています。

本機に採用されたのはサイン・マグニチュード方式といわれるもので、抵抗値「R」と「2R」の抵抗を使い、1bitあたり2個の「R+2R」とするもので、結果大規模なものになってしまったのです。この価格に抑えられたのは驚異的でもあります。

PCオーディオには欠かせないUSB端子からのインプットに関しては、一般的に使われるXMOSではなく、イタリアのアマネロ社製のUSBコントローラーを採用しており、PCM384kHz/24bit、DSD11.2MHzに対応しています。なお、DSDは352.8kHz/24bitのPCM信号へ変換したのち、D/A変換されます。

デジタル入力はUSB(Type-B)以外に、BNC、AES/EBU、I2S(HDMI端子)が各1系統ずつ。S/PDIFが3系統(RCA同軸×2、光TOS×1)用意されています。アナログ出力は、RCAとXLRを各1系統装備されています。

電源もD/Aコンバーターとしては異例の規模で、大型のRコア・トランスを使用し、各セクションに対して9つの独立した高品位なアナログ電源を構成しています。

内部のアナログ回路はあえてシングルエンド構成としており、本機のXLR出力は最終段でバランス化され出力されています。これはバランス回路の場合、前述の「R-2R DAC」基板がもう1枚必要となり、電源構成も複雑化して音質面への影響が避けられないとの考え方からです。

この価格でマルチビットをディスクリートで組んだという、画期的なD/Aコンバーターの登場です。私自身、久々に食指を動かされました。そのサウンドはアナログライクなもので、本来の音源を脚色することなく、高解像度で模写するとしています。ハイエンドの風格もあるとのことです。大いに期待したいと思います。
(あさやん)

2019年5月 1日 (水)

クラスを超えたパフォーマンスに大注目!!『 DALI OBERONシリーズ 』

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回は、お手頃な価格とクラスを超えたハイクオリティ・サウンドを実現した『 DALI OBERONシリーズ 』を取り上げます。

■ DALIのスピーカーについて
DALIは1983年、ピーター・リンドルフによりデンマークに設立されました。

同社は、北欧を代表するAudio Nordグループのスピーカー製造・販売部門で、DALIの名称は「Danish Audiophile Loudspeaker Industries」に由来します。欧米では、ハイエンドスピーカーブランドとして確固たる地位を築いています。

DALIは「オーディオ装置の存在を感じさせずに、もっと気軽に音楽を心から楽しんでもらいたい」という願いから、「Musical Emotion(音楽の豊かな感情)」を標榜し、研究開発をスタートしたといいます。

周波数特性を重視するだけではなく、位相特性にも着目し、ドライバーユニットとネットワーク回路の完全なマッチングを図るべく、一体となって開発。信頼性のあるパーツと確かな技術で入念に作り上げられ、低損失を実現したのです。

また、フラットなインピーダンス特性は、急激な負荷変動を与えない「アンプにやさしい」設計ともいえます。

そのDALIのスピーカーで、2011年の発売以来、世界規模でベストセラーを続けてきたエントリーモデルでもある「ZENSORシリーズ」(一説には日本国内での累計販売台数が10万台を超えたとか)は、オーディオ業界では珍しい7年以上も人気を保った希有なシリーズでした。

しかし、遂にフルモデルチェンジすることになったのです。

その後継である『 OBERONシリーズ 』は、「ZENSORシリーズ」のパフォーマンスを大きく上回るべく、DALIが創業以来35年に渡り培ってきた様々な技術的ノウハウを注ぎ込み、お手頃な価格とクラスを超えたハイクオリティ・サウンドを実現したのです。

『 OBERONシリーズ 』のラインナップは、ブックシェルフ型『 OBERON1 』『 OBERON3 』の2機種、トールボーイ型『 OBERON5 』『 OBERON7 』の2機種、センタースピーカー『 OBERON/VOKAL 』の1機種、そして今回新しく追加された壁掛けスピーカー『 OBERON/ONWALL 』の1機種で、全6機種です。

これらのラインナップにより、2チャンネルの純粋なハイファイ用としては勿論のこと、音質重視のホームシアターでの複数チャンネルのスピーカーに使用することで、音色の一貫性も図れたのです。

それでは、『 OBERONシリーズ 』で採用された技術を順に見てまいりましょう。

■ SMCマグネット・システムを採用したウーファー・ドライバーを装備
2012年発売、DALIの最上位機「EPICONシリーズ」で初めて採用し、その後下位モデルに順次採用されてきた「SMC(ソフト・マグネティック・コンパウンド)磁気回路」のウーファーが、このクラスで初めて採用されました。

SMCはコンパウンド状の砂鉄一粒一粒に科学的コーティングを施すことで電気的な絶縁性を確保し、電流歪を極限まで抑えたものです。


▲ウーファー内部の磁気回路

ウーファーユニットのポールピースの一部にSMCを使用することで、磁気回路内部で発生する磁気変調と渦電流を低減し、結果として1kHz付近の低い帯域の耳につきやすい3次高調波歪を10dB前後も改善でき、高音質化を実現できたのです。

このSMCこそ、DALIのスピーカーメーカーとしての地位を確固たるものにしたとも言える技術です。(「EPICONシリーズ」ではボイスコイルの外側にもSMCを採用しているとのことです。ここはやはりコスト面からでしょう。)

■ 4層巻CCAWボイスコイルを採用
ウーファーの駆動力強化のため、4層巻ボイスコイルを搭載。ただ、4層巻ボイスコイルは駆動力が向上する一方で、重量が増加し、中音域の特性が劣化する可能性も否定できません。そのため、従来より軽量なCCAW(銅被覆アルミニウム線)を採用することで、駆動力と音質向上の両立を果たしたのです。(ONWALLモデルのみ、2層巻ボイスコイル)

■ ウッドファイバー・コーン・ウーファー搭載
ウーファーの振動板には、DALIのトレードマークともいえるウッドファイバー・コーンを採用。均等な振動特性を持っており、偏った振動を抑えることで、正確かつナチュラルな音質を実現できたのです。この振動板は、高分子パルプと木の繊維(細かく砕いたウッドファイバー)を配合した複合素材で、表面にはクリアコートを施しています。エッジのラバーにもリニアで微妙な動きに対応する「ローロスタイプ(良く弾む)」を使用しています。

これにより、炸裂するようなハイレベルなサウンドから、微小な信号に至るまでリニアに反応します。『 OBERON3 』『 OBERON7 』には7インチ(180mm)ウーファーを搭載。通常、(「EPICONシリーズ」などの上位機)使われる6.5インチ(165mm)ウーファーよりも約15%ほど広い表面積を持つため、よりダイナミックな再生が可能となったとしています。

■ すべてのモデルに大口径29mmツイーターを採用
「EPICONシリーズ」では、29mmソフトドーム・ツイーターが新開発されましたが、『 OBERONシリーズ 』では、専用の29mmの超軽量シルクファブリック(絹織物)ツイーターが新規に開発され、全モデルに搭載されています。


▲ツイーターの内部構造

前作「ZENSORシリーズ」をはじめ、一般的な25mmのツイーターより大口径にすることで、大入力が可能で、従来より低い周波数帯域までカバーできたのです。

前述のSMCとの相乗効果で、ウーファーとの繋がりがよりスムーズになったとしています。これにより自然でバランスのとれた均質な中音域再生を実現できたのです。

ポールピースの上部にはソフトフェルトのアブソーバーが装着されており、このダンピング素材を追加することで、従来の簡単な構造のツイーターに使われる平坦なポールピースから生じる不必要な音の反射を抑制したとしています。

また、取付部にはワイドな拡がりを実現する新型ツイータープレートを装備しています。

■ 高剛性MDFエンクロージャー


エンクロージャーには従来機より強化された内部補強構造をもつ、高剛性MDFエンクロージャーを採用しています。内部の吸音材は2種類のものを使用(「ZENSORシリーズ」は単一素材)しており、モデルや配置箇所に応じて最適化しているとしています。

また、よりストレートな低域再生を実現するため、『 OBERON/VOKAL 』を除き、リアバスレフ・ポートを採用(「ZENSORシリーズ」はフロント・ポート)し、さらに『 OBERON1 』『 OBERON3 』『 OBERON5 』『 OBERON7 』のポート開口部を拡がりのあるフレア形状とすることで、エアフロー(空気の流れ)を改善し、ノイズの低減も図れたとしています。

■ 洗練されたデンマーク・デザインを採用
外観は大幅に刷新され、キャビネット・カラーは、ダークウォルナット(DW)、ブラックアッシュ(BA)、ライトオーク(LO)、ホワイト(WH)の4色展開となりました。

DWやBAのモデルはより精悍な外観へ変貌、新しく追加されたLOやWHのモデルはより洗練され、よりスタイリッシュになりました。

フロントグリルのデザインは4隅をラウンドとした斬新なものとなり、DW/BAのモデルにはシャドウブラック、LO/WHにはマウンテングレイのグリルが標準装備されています。

フロント・バッフルは、ブラックとホワイトともに、よりインテリアにマッチする、マット(艶無)仕上げに変更されました。

トールボーイ型の『 OBERON5 』『 OBERON7 』に標準装備された、不要な振動を抑制するアルミ・ベースも、従来よりエレガントなデザインになっています。なお、リアの入力端子は全機種シングル仕様となっています。


▲アルミ・ベース


▲シングル仕様の入力端子

■ 『 OBERONシリーズ 』のサウンドを日本橋1ばん館でじっくり確認しました。(日本橋1ばん館には『 OBERON1 』『 OBERON3 』『 OBERON5 』『 OBERON7 』が展示されています)
『 OBERON1 』


試聴室の中では高さ27.4cmは想像以上に小さく、本来の意味でのブックシェルフ型といえる寸法です。

しかし音を出した瞬間、「本当にこのスピーカーが鳴ってるの?」と思ったくらい低域がしっかりしており、量感も十分感じさせてくれました。特に、滑らかで自然なボーカルは、大型の高級機種でも難しいのではと感じました。

デザインも前作の「ZENSORシリーズ」より高級感があり、サウンドも落ち着きがあり、奥行き表現は明らかに上回っていました。クラシックにも十分対応できる貴重な小型スピーカーといえます。


『 OBERON3 』


『 OBERON1 』より一回り大きい、標準的なブックシェルフ型です。中域は更に充実し、低域の量感も見た目以上にしっかりしたものでした。

やはり大きさからくる余裕を感じさせ、さらに躍動感が出て来て、ジャズやポップス系の快活さも十分味わえます。ベースやピアノは力強くなり、オールマイティにどんな音楽でも楽しめそうです。


『 OBERON5 』


『 OBERONシリーズ 』の中では最もお買い得感のあるスピーカーです。小型トールボーイで場所を取らず、置き台も標準装備されていて、使い易いスピーカーです。

さすがにブックシェルフ型より更に低域が充実しています。全体にバランスが良く情報量も多いのですが、決してモニター的にさらけ出すタイプではなく、音楽の美味しい部分を上手く引き出してくれ、DALIのセンスの良さが感じられます。


『 OBERON7 』


さすがに大型だけあって量感たっぷりで、音楽を朗々と聴かせてくれます。超低域から超高域まで実にスムーズに伸び、密度感も十分感じさせてくれます。中高域の艶やかさや滑らかさはDALIの本領発揮と言った印象です。音場は広く深く透明で見通しが良く、スタジオの空気感まで感じられる程です。この完成度でこの価格は値頃感を感じます。

■ 最後に
『 OBERONシリーズ 』を聴いての筆者の印象は、そのC/Pの高さです。

前シリーズ「ZENSORシリーズ」との価格差はほんの僅か(『 OBERON5 』はペアで2,000円アップ)なのにも関わらず、オーディオ的にも意匠的にもかなりブラッシュアップされたと感じました。

「ZENSORシリーズ」の元気に張り出すタイプの音と違い、落ち着いたオーディオ的魅力を感じさせてくれるハイレベルな仕上がりのスピーカーでした。

デザインも上品なもので、北欧メーカーの落ち着きやセンスの良さを感じさせてくれました。日本家屋にもピッタリです。
(あさやん)

2019年4月29日 (月)

ヘーゲル 最新鋭プリメインアンプ『 H90 』『 H190 』の魅力とは?

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。今回は、ノルウェー発のハイエンドオーディオブランド「ヘーゲル (HEGEL)」の最新鋭プリメインアンプ『 H90 』と『 H190 』の魅力に迫ります。


■ ヘーゲル社とは
ヘーゲル(HEGEL)社は、Bent Holterによって、1997年にノルウェー・オスロで設立されました。社名の由来は、著名なドイツの哲学者ヘーゲルからきているといいます。

その理念は、アコースティック楽器を最も自然な音で再生することで、透明感や微細なディテール表現、抑揚感、臨場感あふれる描写力を追求しているといいます。そのため、半導体物理学の豊富な経験から、実際の音楽信号再生におけるトランジスタの動作を最適化させ、オリジナル音楽の忠実な再生を追い求めているとしています。

ヘーゲル製品は、自然なスタイルで音楽ソース(特に、アコースティック楽器やボーカル)をオリジナル同様に正確に再現することを目指し、人工的に手を加えられることも欠けることもないといいます。ヘーゲルシステムで奏でられる音楽は、生のスタジオセッションに非常に近いもので、音楽愛好家に最も自然な音、及び、可能な限り魅力的な音を提供し、自然で魅力的な音楽再生を実現するとしています。

また、ヘーゲル製品は創業当時から、そのドライブ力や音質が高く評価されており、JAZZファンにはお馴染みの音楽レーベル「ECM」のスタジオのリファレンスアンプとして採用されているとのことです。これこそ、信頼性を極度に要求されるスタジオで使用される程に、ヘーゲルの技術力が高いことを証明しています。

ヘーゲル製品の第一の特徴は、高度な研究結果に基づいた最新のオーディオ・シグナルプロセシング技術を活用していることです。最も特徴的なのは、独自の「Sound Engine(サウンドエンジン)」技術で、それは多くの異なるタイプの静的・動的歪みを取り除く特許取得のフィード・フォワード技術です。さらに、動的なクロスオーバー歪みを取り除くことにも成功しています。これらは、ヘーゲルの全ての機器に採用されています。

この「Sound Engine」こそヘーゲル設立の要因ともなったオリジナル技術なのです。

今回、ヘーゲルのプリメインを紹介されていただく理由は、国産プリメインと遜色ない価格設定を実現した上で、国産にはない魅力的なサウンドを聴かせてくれるためです。それでは、最新鋭プリメインアンプ『 H90 』『 H190 』の特徴を順に見てまいりましょう。

■ ヘーゲル DAC内蔵プリメインアンプ『 H90 』

まず、前作「H80」より価格が4万円も下がっていることに驚きました。前作同様にD/Aコンバーターを内蔵していますが、バランス入力がなくなり、パワーも75W+75Wから60W+60Wに抑えられています。そこには、前作以降の技術的進化を取り入れるとともに、機能を取捨選択することでコストダウンを図り、広くヘーゲルサウンドをアピールしたいという意気込みを感じます。

上級機「H360」で採用された独自の「DualAmp Technology(デュアルアンプ テクノロジー)」を採用しており、一般的なアンプでは、電圧利得段と電流利得段は同一のアンプモジュールとして設計されますが、「DualAmp Technology」では、これら2つの電圧と電流の利得段(ステージ)を、完全に独立した異なるものとして専用設計されています。

本来、電流利得段はスピーカーへの大電流を供給する役割を担っていますが、この2つのステージを分離させることにより、スピーカー駆動の大電流に起因する影響が、感度の高い電圧利得段のパーツへ及ぶのを防いでいるのです。これは、プリメインアンプの形式を取りつつ、セパレート化したともいえ、更なる低歪み率と高ダイナミックレンジ特性を実現したのです。

また電源部でも、電源トランスの巻線を別にすることで同様の構成(デュアルパワー電源)をとって、電流増幅の影響を回避しているとしています。高品位でハイスピードな電源も、同社の従来からの特徴でもあります。

出力段はバイポーラ・トランジスタによるシングル・プッシュプル(PP)動作で、前述の「Sound Engine」という一般的なNFB(ネガティブ・フィードバック:負帰還)ではなく、フィードフォワード(出力に影響するような歪みを予測し、前もって打ち消してしまう制御方式)での補正回路を採用しています。

このフィードフォワード補正回路の動作原理は、PP動作を構成するNPN型とPNP型の非対称の特性をもつトランジスタでは、どうしても避けられないクロスオーバー歪みや混変調歪みを解消するための技術です。一般的に使われるバイアス電流の調整では、実際の音楽信号自体が非対称であるため、効果がないとの考えから開発されたといいます。

本機ではこれまでの製品より、これをさらに進化させており、さらなる低歪率を実現し、ダンピングファクターも前作「H80」の1000から2倍の2000にまで向上させています。

ボリュームには、高周波測定器レベルのテクノロジーに基づいた高精度で低ノイズレベルの電子ボリューム(※)が採用されています。スピーカーターミナルは1系統ですが、このクラスとしては贅沢なWBT製が使われています。※2013年のノーベル賞のヒックス粒子検出に採用された技術を応用

入力系では、バランス入力をなくした分、Ethernet(LAN)入力が採用されたのですが、本機は前作同様にD/Aコンバーターが搭載されており、従来の光(TOS×3系統)/同軸/USBにEthernetが加わることで、ネットワーク再生にも対応することになったのです。

光/同軸は、192kHz/24bitに対応。USB入力はドライバーなしで再生可能な96kHz/24bitまでにとし、あえて高スペックを目指すのではなく、コンピューター上のプレイリストでの再生では、プレイ/スキップ/ポーズを付属リモコンで操作できるという親切設計です。

フロントパネルには上位機種と同じ、有機ELディスプレイやヘッドフォン出力端子を装備しており、入力ソース切替およびボリュームコントロールは、コンパクトな付属リモコンで可能です。フロントパネルは複合素材による緩やかな美しい「ヘーゲル曲線」ともいわれる曲線を描いたシンプルなもので、優雅で北欧らしさを感じさせます。

■ ヘーゲル DAC内蔵プリメインアンプ『 H190 』

「H160」の後継機であり『 H90 』の上位機です。『 H90 』同様、「DualAmp Technology」と「Sound Engine」、そしてデュアルパワー電源を採用しています。出力段は、パワーバイポーラ・トランジスタのパラレル・プッシュプルとなっており、出力は 150W+150W(前作同様、4Ω負荷時250W+250W)です。

大型トロイダル電源トランスと6本の高品位フィルターコンデンサーを備えた強力でハイスピードな電源部を搭載しており、ダンピングファクターは驚異の4000以上を実現しています。

入力は、『 H90 』にXLRバランス1系統とRCAシアターパススルー入力1系統が加わり、もちろん本機もEthernet入力を備えておりAirPlay/DLNA/Spotifyなどのネットワーク再生、ストリーミング再生にも対応しています。

■ 日本橋1ばん館リファレンスルームで『 H90 』を試聴しました。

写真下段:HEGEL『 H90 』(上段:Mytek「Brooklyn DAC+」)



そのサウンドの第一印象はビロードのように滑らかで、静かで透明感が素晴らしく音場は澄みわたっていました。重苦しさは皆無で、音楽にどんどん引き込まれてしまいそうな、表現力の高さを実感しました。

低域は無理に下まで欲張ったり、グイグイ押しの強いタイプではないのですが、決して痩せることはなく、ブーミー感のない締まりあるもので、弾み感、スピード感も十分です。

中高域は暖かく穏やかで、耳に優しく感じました。特に印象的だったのは、ボーカルとアコースティック楽器で、ボーカルの生々しさは格別で人肌の温もり感、伸びやかさは生で聴いているようでした。ベースやアコ-スティックギターの木質感は抜群で、とにかく鮮度感が高くリアルでした。

ヘーゲルの一見地味なデザインは、日本人には好みの分かれる所ですが、しっかりした作りの落ち着いたデザインは、何年経っても飽きさせないものがあります。

『 H90 』は、20万円台の国産プリメインでは絶対味わうことのできないサウンドを提供してくれます。こういう音楽性たっぷりの本物のプリメインが、日本でもっと受け入れらるようになれば、いよいよ国内オーディオ市場も真の成熟期に入ったといえると思うのですが・・・。
(あさやん)

2019年4月27日 (土)

究極のデジタルプレーヤー! エソテリック『 Grandioso P1X / D1X 』遂に完成!!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。今回は、エソテリックより、遂に完成した究極のデジタルプレーヤー『 Grandioso P1X / D1X 』を取り上げます。


■ オーディオショウで注目の的
昨年(2018年)の「東京インターナショナルオーディオショウ」での出展ブースの中で、最も注目を集めたのがエソテリック。中でも、今回取り上げる最新トランスポート『 Grandioso P1X 』と、D/Aコンバーター『 Grandioso D1X 』に注目が集まっていました。

あまりの来場者の多さに、筆者もなかなか展示品まで近づけなかったのを思い出します。それほどにオーディオマニアはもちろんのこと、販売店の担当者でさえ、現物を一目だけでも自分で確かめたくて製品の前に殺到したのでした。

オーディオショウの時点では、まだはっきりとした製品価格や製品内容のアナウンスはありませんが、これは恐らくかなりの高額(国産としては)になるだろうことは想像できました。それくらいに同社の従来製品はもとより、世界中のデジタルディスクプレーヤーの中でも飛び抜けたフィーチャーが『 Grandioso P1X 』にも『 Grandioso D1X 』にも見られたためで、その詳しい内容の発表が待ち望まれていました。今回は、その全貌に迫りたいと思います。

■ エソテリック『 Grandioso P1X / D1X 』までの変遷
ティアックがハイエンドブランドとして「エソテリック」を初めて名乗ったのが、今から32年前の1987年。最初の製品がオリジナルのVRDSメカニズムを搭載した「P1」と、そのペアとなるD/Aコンバーター「D1」でした。

その後、1997年にブランド誕生10周年記念として、今や伝説となったCDトランスポートの名器「P-0」を発売。2004年には株式会社ティアック エソテリック カンパニー(その後、2008年エソテリック株式会社に社名を変更)として独立、フラッグシップとなるSACD/CDセパレートプレーヤー「P-01」「D-01」を発売したのでした。

そして2013年、《 ESOTERICのすべての英知を結実し、新たなる頂きへ向かう。グランディオーソと言う名の新たなるフラッグシップ 》として、「Grandioso P1」「Grandioso D1」「Grandioso M1」を発売。2017年にブランド生誕30周年を迎え、2019年春、遂に「究極のデジタルプレーヤー」の『 Grandioso P1X 』『 Grandioso D1X 』が誕生したのです。

それでは、その「究極」のフィーチャーを見てまいりましょう。

■ SACD/CDトランスポート『 Grandioso P1X 』(本体と電源部の2筐体)

前述の初代「Grandioso P1」が登場して6年。この間、CDメカ、とりわけSACDメカは開発メーカーSONYを含め、殆どがその製造から撤退してしまい、SACDのフォーマット自体が存亡の危機とも言える状況(もちろん、一部のレーベルはソフトの供給をし続けてくれていますが)です。そんな中、孤軍奮闘ともいえるのがエソテリックです。それこそが、自社でメカを作れる強みです。

2003年にSACD対応トランスポート・メカニズム「VRDS-NEO」が登場してから16年間、基本設計は変えてきませんでした。『 Grandioso P1X 』では新たなメカ「VRDS-ATLAS」を開発し、搭載したのです。これが今回の最大のトピックです。ちなみに、ATLASとはギリシャ神話の神様で、「両腕と頭で青空を支えるとされる、巨体の神」のことだそうです。

既に、業界最高のメカと謳われた「NEO」のレベルを、これ以上に向上させるということは至難の技であったことは想像に難くありません。これこそ同社にとっては、社運を掛けた挑戦だったともいえます。「NEO」のメカ設計を根幹から見直し、類まれなる機構の構築と高音質を誇る新規設計の究極のメカ「ATLAS」が遂に完成したのです。

「ATLAS」はVRDSメカニズム史上最高の剛性と重量を誇り、剛性と力強い音色を両立するSS400スティール製フレーム、ブリッジを大型化し、「NEO」との比較で重さが+27%(メカ単体6.6kg、ベース部含め13.5kg)もの重量級コンストラクションが実現したのです。この結果、音質に悪影響を及ぼすあらゆる振動を極限まで減衰させたといいます。私はオーディオショウで、メカの見本を持ち上げさせてもらった際の重さには驚愕しました。

ターンテーブルには、すでに音質で定評のあるジュラルミンを採用。スムーズな回転のため、スピンドル軸受けには新設計のスティールボールによる点接触のスラスト軸受け(回転体の軸方向に働く力を受け止める軸受)を採用し、摩擦や回転ノイズを極限まで抑える設計としたのです。さらに、メカニズム全体を低重心化し、モーターをターンテーブルの下側に持ってくる駆動方式に変更することで振動の地面へのアースが強化され、機械的ノイズを圧倒的に低減することに成功したのです。

トレーの開閉機構には、「これぞハイエンド」といえる操作感・質感を実現。トレーは最も共振が少ない形状にデザインされ、スムーズな開閉、驚くほど遊びが少なく精密にロックします。さらに、特殊な振動吸収樹脂で音楽再生時のトレーの共振を最小限に防いでいます。

「ATLAS」メカ以外にも、
  1. HDMIケーブルを使って広帯域伝送を可能にする独自のES-LINKは最新鋭「ES-LINK5」と進化し、最大:DSD22.5MHz、PCM768kHz/48bitの伝送が可能になりました。『 Grandioso D1X 』との組み合わせで最高のパフォーマンスを発揮します(もちろん『 Grandioso D1X 』にも採用)。
  2. 伝統の本体と電源部を分離した、2シャーシ構成を採用。電源ユニットには、合計で4つの独立したトロイダル電源トランスを搭載。
  3. 電源回路にはスーパーキャパシター「EDLC」を38本(合計容量1,400,000μF)搭載し、低域の解像度などに目覚ましい音質向上を実現できたとしています。
  4. 新たにトップパネルをネジで締め付けないセミフローティング構造にすることで、伸びやかで開放感のあるサウンドを引き出したとしています(『 Grandioso D1X 』にも採用)。

■ D/Aコンバーター『 Grandioso D1X 』(モノラル2筐体)
今や、D/AコンバーターやCDプレーヤーに搭載されているDACチップ(ESSやAKM製)がマニアの注目を集め、少々騒ぎすぎの感なきにしもあらずの状況です。それはあたかも、DACチップが機器の音質を大きく支配しているかのような論調(※)があまりに多すぎるからでしょう。
※ここは筆者も大いに反省すべきだと思っています。

そんな中、エソテリックは集積回路によるチップよりも、更にハイグレードなパーツ、贅沢な物量を投入して、完全自社設計の64bit DAC回路「ESOTERIC Master Sound Discrete DAC」をディスクリートで作り上げてしまったのです。小さく詰め込まざるを得ないチップとは違い、大きく作れるメリットは計り知れないと思います。


写真のように、半円形に配置された8つの回路エレメントが1つのDAC回路を、それをチャンネルあたり4回路使って構成。合計で32回路(2つの円形として配列)を独立させる贅沢な構成を採用しています。もちろん、自社工場での厳密な管理下で製造し、バラツキを極力抑えているといいます。これこそ至難の技であり、そこにはエソテリック技術陣の執念さえ感じさせます。

前作「Grandioso D1」は、旭化成(AKM)の32bitDAC「AK4495S」を搭載し、PCM:384kHz/32bit、DSD:2.8/5.6MHzに対応していたのに対し、本機では64bit高解像度処理により、PCM:768kHz/32bit、DSD:22.5MHzまでネイティブで変換できるといいます。16bitのCDにおいても、その効果は絶大だといいます。しかも、今話題のMQAデコード(もちろん、MQA-CD)にも対応しています。

「ディスクリートDAC」以外にも、
  1. 独自の電流伝送強化型出力バッファー回路(ESOTERIC-HCLD)には、応答速度を表すスルーレートが2,000V/μsという驚異的なハイスピードを誇る素子を採用しています。
  2. デジ/アナの分離を電源部まで徹底し、電源レギュレーターは、集積回路を使わないディスクリート構成としています(『 Grandioso P1X 』にも採用)。
  3. 『 Grandioso P1X 』同様、電源回路の随所に「EDLC」を合計50本(合計容量1,300,000μF)搭載。
  4. ソース、お好みに応じて、PCMデジタル信号を2 / 4 / 8 / 16倍(最大768kHz)へのアップコンバートや、PCM→DSDの変換機能も搭載しています。さらにデジタルフィルターのON / OFFも可能です。リスナーの好みの音質が選べます。

■ 最後に
このように、フラッグシップの名に相応しい究極のデジタルプレーヤー(トランスポート+D/Aコンバーター)の完成です。16bitのCDの音がハイレゾを上回ったとの噂も流れてきました。まさに、エソテリックは「そこまでやるか」を具現化してしまったのです。

エソテリックが、さらにその上を行く「超エソテリック」になった瞬間です。
(あさやん)

2019年3月27日 (水)

SOULNOTEのD/Aコンバーターが「D-1N」に進化!! 上位機のノウハウを惜しみなく注入!!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。今回は、上位機「D-2」のノウハウを惜しみなく注入したSOULNOTEのD/Aコンバーター『 D-1N 』を取り上げます。




■ 業界に衝撃を与えたD/Aコンバーター
2018年夏、オーディオ業界に衝撃を与えたSOULNOTEのD/Aコンバーター「D-2」。

とにかくその圧倒的な物量投入、そして何といっても当時最高級DACチップとしてその名を欲しいままにしていた(それは今も続いていますが)、ESS製DACチップ「ES9038PRO」を合計4個も搭載。国産最高峰のD/Aコンバーターの地位を築いたのでした。そして、この価格帯としては異例のヒットを記録しています。


同機のもう一つのトピックは、デジタル領域における無帰還化とも言える「NOS(ノンオーバーサンプリング)モード」を採用したことでした。通常使われるFIR(デジタルフィルター)オーバーサンプリングのインパルス応答では避けられない、プリエコーやポストエコー(デジタル特有の滲みや抜けの悪さの原因)が発生しないのです。


図1:FIRオーバーサンプリングフィルターでのインパルス出力波形


図2:NOSモードでのインパルス出力波形

通常のD/Aコンバーターでは、D/A変換時に生じるノイズを回避するために、オーバーサンプリングして高周波領域でアナログ変換するのですが、この際どうしても時間軸での正確さを損なって(図1)しまいます。そこでSOULNOTEが選択したのが、オーバーサンプリングをしない「NOSモード」(PCM時のみ)なのです。

これは、極めて過渡応答性能に優れた同社オリジナルの「無帰還ディスクリートアンプ」とのコンビネーションで初めて実現できるのです。音楽波形は高さの違うインパルス波形の連続であるため、「NOSモード」により時間軸(※)情報の曖昧さが払拭され、時間軸に対して非常に敏感な人間の聴覚に、よりリアルで自然な音質や空気感をもたらすとしています。
※ 時間軸のブレは、PCM:24bit/192kHzであってもパルス波の前と後ろで各250μ秒、トータルで500μ秒もあるのですが、人間の耳はわずか3μ秒を認識できるといいます。いかに「NOSモード」が効果的であるかがこれで分かります。CDなどのデジタルサウンドが、平面的で奥行きのない音と感じるのはそのためだったのです。

私は以前、「NOSモード」を初めて採用した「D-2」を自宅で聴く機会(スタッフブログでご覧ください)があったのですが、その時の衝撃を「スケールの大きな安定感、アナログを彷彿とさせる立体感、生き生きとした自然な吹っ切れ感、圧倒的な情報量の多さ、力強く伸びきった低音、正確無比なエネルギー感、スピード感、これだけ説得力のあるD/Aコンバーターをかつて聴いたことがないと断言します。」と記しています。

この「D-2」の開発で得られたノウハウを注入して、大きなアップグレードを果たしたのが『 D-1N 』です。

■ SOULNOTE D/Aコンバーター『 D-1N 』
SOULNOTE『 D-1N 』の前作「D-1」は、SOULNOTE 10周年記念モデルとして2017年に発売され、約30万円という価格ながら大ヒットとなりました。「D-1」はUSB-DACとしては勿論、デジタル入力は同軸2系統、AES/EBUを装備し、お持ちのCDプレーヤーと最新D/Aコンバーターとの組み合わせによる、大幅なCDプレーヤーのグレードアップにも貢献したのです。

何といっても、このクラスD/Aコンバーターとしては異例な「ES9038PRO」をモノラル使用で2基、SOULNOTEオリジナルの「無帰還ディスクリートアンプ」、パワーアンプかと思わせるような260VAの「大型トロイダルトランス」の搭載などが、繊細な空間表現と骨太でエネルギー感に満ち溢れた再生音の両立を実現できたのです。オリジナルの「D-1」は「D-2」の下位モデルなどではなく、その元となったモデルだったのです。


『 D-1N 』の内部(中央下が「大型トロイダルトランス」)

左右の小さな円型に見えるコンデンサ群により、SOULNOTE伝統の、大型の電解コンデンサを使用せず小容量のコンデンサを多数パラレル接続することで高周波特性と総合容量をコントロールし、ハイスピード電源を実現しています。

「D-1」同様『 D-1N 』は、120mAにも及ぶ強力なDAC電流出力を、MHz領域まで伸びる「ディスクリート無帰還アンプ」で受け取り、これを強力に増幅し出力します。「ES9038PRO」と「無帰還ディスクリートアンプ」のコンビネーションにより、オペアンプ(集積)回路では得ることができない、エネルギーに満ち溢れた生々しい音楽再生を実現したのだとしています。

そして何より、デジタル機器としては最重視すべきクロックには、超低ジッタークリスタルを採用しています。位相ジッター:1ピコ(10-12)秒以下の超低ジッタークリスタルをDAC チップに極限まで近接させる回路基板のパターンレイアウトにより、理想的なクロック波形を得ているのです。

電源には同社オリジナル高速ディスクリートレギュレターを採用した8種類の、それぞれの回路専用の電源を搭載しており、特に大電流を必要とする「ES9038PRO」の実力を限界まで引き出すことができたとしています。

さらに「D-1」は発売1年後、新機能として画期的な転送方法「Bulk Pet」が追加されました。本機にももちろん採用されています。USB-DACでは一般的にアイソクロナス転送方式によってデータを転送していますが、インターフェイス社が開発したBulk(バルク)転送方式とすることで、パソコンおよびD/Aコンバーターの負荷の軽減が実現でき、再生音質が大きく向上したのです。

その「D-1」が、前述の上位機「D-2」に搭載され評価の高い「NOSモード」を採用し、価格上昇をわずか3万円(税別)に抑えて、『 D-1N 』として大きくアップグレードを果たしたのです。「NOSモード」以外は「D-1」との違いが全くなく、「D-1」を既にお持ちの方でも、その差額分+送料で『 D-1N 』へCSRにてアップグレード作業(※)が可能です。何と親切なメーカーでしょう、ますます信頼感が持てます。進歩の早いデジタル機器はこうでなくてはならないと思います。
※『 D-1N 』へのアップグレードは修理扱いでの受付けとなります: 料金30,000円(税別・送料別)。 詳しくは、SOULNOTEのホームページをご覧いただくか、Joshin webショップの《 連絡帳 》にてお問い合わせ下さい。

■ 試聴は日本橋1ばん館の店頭で行いました

日本橋1ばん館の展示品はブラックタイプ

「NOSモード」オフ時はオリジナルの「D-1」と同じということから、その音質(SOULNOTE伝統の吹っ切れ感と音楽性の両立)の確認は短時間で済ませ、早速「NOSモード」オンでの試聴を始めました。

吹っ切れ感、生々しさはオリジナルを明らかに上回り、音楽の隅々まで描ききり、個々の楽器がはっきり分離し、鮮度が大きく向上していました。低域はオリジナルとの差はほとんど感じませんでしたが、中高域の切れ味や解像度の高さは「NOSモード」が貢献していることを十分納得させる音質でした。これは3万円どころの差ではないとも確信しました。

国産最高峰の上位機「D-2」のノウハウを惜しみなく注入して誕生した『 D-1N 』の進化こそ、新たなPCオーディオの始まりともいえます。
(あさやん)

2019年3月20日 (水)

日本が世界に誇れるスピーカー!クリプトン『 KX-3Spirit 』 ~密閉型・アルニコマグネット・クルトミューラーコーンへのこだわり~

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。今回は、最激戦区の2ウェイ ブックシェルフ型スピーカーにおいて、国産でひとり気を吐くクリプトン『 KX-3Spirit 』を取り上げます。




■ 2ウェイ ブックシェルフ型の現状
2ウェイ ブックシェルフ型、それには入門機から超ハイエンド機まで存在し、スピーカーシステムの構成としては、シンプルさと広帯域再生を両立できる唯一無二の存在です。

かつては国産が、各価格ランクに多数の機種をラインナップしており、人気を博していました。国内のオーディオ草創期には、パイオニアやオンキヨー、そして一世を風靡したダイヤトーン、ヤマハ、ビクターなど、超ハイエンドを除いて、国産が台頭していました。

しかし世は流れ、現状では国産スピーカー全体に今や見る影がないのはご承知の通りです。その国産が総崩れとなっていく過程で、ヨーロッパ系スピーカーがドドーッと押し寄せ、今や国内市場を席巻してしまった感さえあります。

その理由は、C/Pの高さはもとより、メーカーごとの音質・デザインの個性、さらには日本のマニア層、特にクラシックファンやボーカルファンが好むヨーロピアン・サウンドが牽引したのだと思います。

■ 独自の道を歩み続けるクリプトン
こんな中、独自の道を歩み続けるクリプトンは、今や国内では貴重な存在です。そして同社は、スピーカー事業に参入(2005年)して以来、一貫したポリシーのもと、世の中の動向に惑わされることなく、コンスタントに製品を開発し続けてきたのです。

初代機の「KX-3」以来、その製品開発と音決めを担っているのは、言わずと知れた元ビクターのスピーカーの設計者で、スピーカー技術者としてはレジェンドとも言える存在の渡邉 勝氏です。渡邉氏のスピーカー設計の出発点ともいえるスピーカーこそ、かの有名な名機ビクター「SX-3」なのです。
(余談:私が初めてのオーディオシステムに導入したのが「SX-3」でした。)

その「SX-3」こそ、クリプトン『 KX-3Spirit 』の原点ともいえます。まず型番からして「3」であり、いずれも密閉型2ウェイ、独クルトミューラーコーンのウーファー、ソフトドームツイーター、そしてアルニコマグネットなのです。更にそのまた原点こそ、エアーサスペンション方式で有名な米国Acoustic Research社の「AR-3a」だったと渡邉氏は言います。

渡邉氏がそのぶれることないポリシーを貫けてこられたのは、音楽性が豊かな中高域と、躍動感のある伸びやかな低音再生のために、かたくなに密閉型とMade in Japanにこだわってきたのだと言います。「KX-3」シリーズの第5世代にあたる『 KX-3Spirit 』こそ、渡邉イズムの集大成でもあります。

■ クリプトン『 KX-3Spirit 』とは
前作からの大きな変更点は2つ。ツイーターとエンクロージャーです。

【ツイーター】
これまでのピュアシルクドーム型から、上位機で採用されていた35mmピュアシルク・リングダイアフラム型ツイーターに変更され、高域再生限界が35kHzから50kHzへと大きく拡大しています。中心部分に砲弾型のフェイズプラグを持たせることで、高域反射波が中心軸をまたいでの干渉を防止し、高域特性を伸ばせたのだとしています。元来ハイレゾに積極的なクリプトンとしてはこれは当然の成り行きだと思います。

【エンクロージャー】
前作までの針葉樹系高密度のパーチクルボード・天然木突き板仕上げから、高級家具にも使われ音響的に優れて、見た目も美しい木目の「スモークユーカリ」のエンクロージャーに高級塗料のポリエステル仕上げ(ピアノ塗料と同じ)を施し、響きの豊かな中低音再生に貢献したのです。

更に外からは見えないため意外と見逃されがちですが、内部配線材には「マグネシウム単芯にPC-Triple Cの撚線を巻きつけた」特殊な最新のスピーカーケーブルを採用。定評ある「かしめ方式」を採用した低歪みの高音質ネットワーク回路と併せて、濁りのない透明でナチュラルな高音域再生を実現できたとしています。

勿論、同社のポリシーを具現化した従来技術を本機も踏襲しています。

【アルニコマグネット】
ウーファーとツイーターには、高価で貴重な「アルニコマグネット磁気回路」を採用しています。アルニコマグネットを継続して使い続けていることに敬意を表するとともに、同社の執念さえ感じます。ウーファーはこだわりの内磁型アルニコとしています。
※アルニコは希少金属のコバルトが必要で、国際情勢や戦争などよって価格が影響されやすく、かつてはJBLの4343と4343Bなどで音質の差に失望したマニアも多かったのではないでしょうか。それ程にアルニコマグネットは、締まりのある低域と密度感のある味わい深い高域再生が魅力です。

【クルトミューラーコーン】
前述の「SX-3」やタンノイ、かつての独ブラウンなどにも採用され、音質の良さと音楽性に定評のある伝統の「クルトミュラーコーン」をウーファーに採用しています。十分な剛性と内部損失を持ち、エッジワイズ巻ボイスコイルやハイコンプライアンス設計により、低域再生限界 35Hzを達成し、熟成した魅力的な中低域再生を実現しています。

【内部吸音材】
「ミスティックホワイト」と「ウール(純毛)」のハイブリッド吸音材と独自の吸音材チューニングにより、理想的な制動特性を獲得し、密閉型エンクロージャーのピュアな低域再生というメリットを生かすことに成功したのです。

これらの徹底したこだわりこそ、国産クリプトンのKRIPTONたる所以だと思います。

■ 日本橋1ばん館リファレンスルームで試聴


癖を全く感じさせない自然な音調で、ヌケの良さは抜群。付帯音やザワザワ感が皆無で、歪みのない透明感はまさに生音(なまおん)そのもの。

弦楽器は繊細で滑らか、棘や歪みっぽさは皆無で、素材の良さから来る木質感は絶品です。ピアノの立ち上がりがスムーズで、響きが豊かで混濁感は微塵もありません。

声は澄み切って爽やかに伸びきり、決して出しゃばり過ぎることはありません。特に日本人の女声ボーカルは抜群で、ちょっと他では味わえないしっとり感です。

密閉箱ならではの締まった低音ながら、厚みは十分確保しており痩せることはありません。この温かみを伴った鮮度感こそが、海外製にはない"クリプトンサウンド"なのです。

■ 最後に
日本が世界に誇れるスピーカー、クリプトン『 KX-3Spirit 』。これこそ、ポジティブな意味において、真の『 ジャパニーズ・サウンド 』の確立です。
(あさやん)

2019年3月14日 (木)

JBLスタジオモニター「43シリーズ」の系譜。最新鋭『 4312G 』登場!!

ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。今回は、JBLスタジオモニター「43シリーズ」の系譜、JBL 3ウェイ スタジオモニタースピーカー『 4312G 』を取り上げます。




以前、JBL「L100 Classic」を取り上げた際にも書きましたが、私は学生時代(70年代初頭)スピーカーを選ぶにあたって、JBLのコンシューマ用「L100」にするか、プロ用「4311」にするか大いに悩んだ末、そのカッコ良さに惚れて「4311」の購入に至ったのでした。

プロ用で最も小型の「4310」(1971年発売)を原器として、「4311」(1973)、「4311A」(1976)、「4311B」(1979)と、「4311」が3代続きました。その後、「4312」(1982)となり、「4312A」(1986)、「4312XP」(1990)、「4312MK2」(1996)、「4312BMK2」(1999)、そして20世紀最後の年に「4312SX」(2000)、「4312D」(2004)、「4312E」(2010)、「4312SE※」(2016)と連綿と続いて来ました。(※JBL創立70周年記念スペシャルエディションモデル)

今回ご紹介します『 4312G 』は、先にリリースされた「L100 Classic」の開発で得られた数々のノウハウを「4312シリーズ」に移植した最新鋭機です。

■ 『 4312G 』のデザイン


「4310」から「4311」シリーズにかけてのユニット配置は、ウーファーが上にきて、アッテネーターと銘板が下部にくる、変則的なデザインでした。これはスタジオの天井近くに設置してモニターすることを前提に、レベル調整が可能なように配置したものでした。

しかし、私のようなホームユーズでも、そのカッコ良さに憧れ、そのままの形で設置して聴いていました。その後「4312」になってウーファーが下、アッテネーターが上の通常のスピーカーのスタイルになり、現在まで続いています。

■ 『 4312G 』のユニット構成


ウーファーは「Project K2 S5800」のために開発された、JBL史上最強の12インチ(300mm)ユニットともいわれる1200FE系ユニットをベースに、「4312SE」に用いられた《 1200FE-8W 》や、「L100 CLASSIC」の《 JW300PW-8 》の特徴を受け継ぎながら、最新技術により更なる低歪化を実現した《 JW300SW 》を搭載しています。コーン紙にはホワイト・ピュアパルプコーンを採用しています。




ミッドレンジは、125mm口径の新型コーン型《 JM125PC 》(4312SEとL100 CLASSICは105H-1)で、更なる低歪とフラットレスポンスを目的に開発され、少し光沢のあるポリマーコーティングが施されています。




ツイーターは、前作「4312SE」と同じ1インチドームツイーター《 054AlMg-1 》で、良好な超高域レスポンスを獲得するために開発されたアルミ-マグネシウム合金ダイアフラムと、強力なネオジム・マグネット採用の25mm径ドームツイーターです。

ちなみに、「L100 CLASSIC」では明るく伸びやかなサウンドを狙って、ピュアチタン・ドームツイーターが採用されています。

■ 『 4312G 』の特徴
エンクロージャーは歴代モデルと全く同じ寸法(W362×H597×D305mm)の前面バスレフタイプで重量は25.2kgあり、これは記念モデル「4312SE」と同じですが、歴代モデルが20kg以下であったことからすると、かなり強化されてもいるようです。

そして、今時は珍しくなったミッドとハイのレベルアッテネーターも、従来機通り装備されています。リアのスピーカーターミナルも伝統的なシングルワイヤー仕様となっており、強度も上がっています。

「4312」シリーズは伝統的にウーファーをフルレンジ駆動してきており、本来の3ウェイ構成ではなく、フルレンジにミッドとハイを重ねる変則3ウェイとでも呼べるものでした。

過去に私もJBLのフルレンジ「D131」にツイーター「075」を加えたり、更にフォステクスのフルレンジを中域に使ったりした経験もありますが、出てくる音はウーファーが支配的になり、安定感のある豪快なサウンドでした。

これが「4312」シリーズ独特の立ち上がりの良さや吹っ切れ感、リアル感に繋がり、ジャズ・ポップス系のファンに支持されて来たのです。高域の伸びはあまり欲張らず、あくまで中域の厚みや充実感を狙った音作りに徹してきたのでした。

良い意味でのドンシャリが「4312」シリーズの持ち味ともいえます。

しかしハイレゾ音源の普及に伴い、やはり再生帯域の限界を感じていたのは私だけではなかったと思います。そこで前作の記念モデル「4312SE」では、初めてウーファーの上を640Hzでロールオフさせて、本当の意味での3ウェイ化を実現させたのでした。

また、高域も「4311」時代は15kHzまで、「4312」も「4312BMK2」までは20KHzまでと欲張ってはいませんでした。しかしハイレゾが云々が言われ出した2010年発売の「4312E」からは再生帯域を拡大し、ハイレゾにも対応可能な40kHzまでとしたのでした。

この結果、『 4312G 』では記念モデルとしてではなく、レギュラーモデルとして初めて広帯域再生を実現し、より幅広いジャンルに対応できるようになったといいます。

しかし、後述するように、本機が並の平凡な3ウェイスピーカーになってしまったのではなく、そこは伝統を大切にした音作りに徹しており、エネルギー感、押し出し感のある明るいサウンドが息づいています。

■ 日本橋1ばん館での試聴結果


手前から『 4312G 』「4312SE※」「4319」です。※試聴時には、まだ前作「4312SE」が店頭にありましたので、比較試聴しました。

まず第一印象は『 これぞJBLサウンド!! 』でした。私のようなかつての「4311」ユーザーにとっては、近年のJBLスピーカーには少々欲求不満気味なところもあったのです。それはオールマイティを狙うあまり、滑らかでフラットなサウンド傾向が強かったためで、かつてのじゃじゃ馬的な大らかさが影を潜めていたためでもあります。

『 4312G 』の音の張り出し感、鳴りっぷりの良さは抜群で、中域の厚みもたっぷりで最近のスピーカーでは珍しいものです。ただ、超低域や超高域はあまり欲張っておらず、音楽の美味しい部分を積極的に出そうとしていると思います。特に、ピアノやボーカルの生々しさは秀逸でした。これこそJBLスピーカーのDNAを受け継いだサウンドだと思います。

ちなみに「4312SE」に切り換えますと途端にハイファイ調になり、フォーカスがはっきりし、荒々しさのないスムーズなサウンドになりました。これはこれで優等生のJBLサウンドですが、私的には少々物足りなさも感じたのでした。

『 4312G 』の使いこなしのコツは、あえて最新の高純度SPケーブルや高剛性のSPスタンドを使う必要はなく、その方が本機の良さが生かされると思います。また、設置時ツイーターは必ず外側にくるように、アッテネーターの位置は真ん中にこだわらず、お部屋の状況に合わせて積極的にいじっていただきたいと思います。

そして、今やこのエンクロージャーサイズでは珍しい30cmウーファーならではの小音量時の痩せない低音も魅力的です。夜間のリスニングも楽しめそうです。

最後に駆動アンプとしては、ハイファイ一辺倒でなく音楽性を大事にした、マランツやラックスマンあたりのプリメインアンプとの相性が良いのでは?とも感じました。

『 4312G 』は、間違いなくJBLスタジオモニター「43シリーズ」の系譜です。

※ご注意:JBL『 4312G 』は1台の価格です。必ず左右(L/R)を1台ずつ計2台ご注文下さい。スピーカーユニットの配置が左右対称になっています。
(あさやん)

2019年3月11日 (月)

ますます面白くなる『 PC&ハイレゾオーディオ 』に新たな「うねり」が!

ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
ますます面白くなる『 PC&ハイレゾオーディオ 』に、いま新たな「うねり」が始まりました。今回は、過去の反省を踏まえ、今後のオーディオの流れを私なりに読み解いてまいります。


■ 新たな「うねり」とは?
2008年頃に注目され始めた『 PC&ハイレゾオーディオ 』。私がこのコラムを担当し始めたのが2013年で、これまで何度も当時の状況やその後について私見を述べて来ました。

その中には、「USB-DACが雨後の竹の子のごとく登場」(2013)、「USB-DAC台頭、最後のディスクプレーヤーか?」(2013)、「ハイレゾの数字競争に警鐘」(2014)、「PCオーディオに再チャレンジ」(2017)、「OPPOが大ヒット!PCオーディオに再注目」(2018)と、続きました。

その間、オーディオメーカー製USB-DACの音質的優位性や、ディスクプレーヤーの終息宣言とも受け取れる内容を述べていますが、その後国内では一部のハイエンドメーカーを除いてデジタル関連機器の開発力が急速に落ち、新規にチャレンジするメーカーが減ってしまいました。

また、SACDには大きな動きはなかったものの、数年前に異常な盛り上がりを見せたアナログブームを経て、メインソースとしてのCDが再度見直され、そこにMQA-CDの話題が加わったことで、CDプレーヤーの買い替えが始まったのでした。

その後、ハイレゾの数字競争もPCM 384kHz、DSD 11.2MHzが上限でほぼ落ち着き、それ以上のスペックによる音質改善効果には疑問の声も上がりはじめ、オーバースペックによる弊害さえ囁かれはじめました。

また2017年には、PCオーディオの救世主として彗星のごとく登場したOPPO「Sonica DAC」が一次爆発的な売れ行きを示したものの、2018年の年初になっていきなり生産中止となってしまい、我々販売側としては梯子を外された格好で、同時に急速にPCオーディオ市場の熱も冷めてしまったのでした。

そして今年(2019年)、昨年末からハイエンドDACに「うねり」とも言える新たな動きが始まったのです。それはかつて、PCオーディオの黎明期に購入されたUSB-DACの買い替えによる最新鋭機へのグレードアップ。そして、CDソフトの魅力再発見から始まった、最新D/AコンバーターによるCDサウンドの見直し機運の高まりだと思います。さらには、話題のMQA-CDという新たなソースを一度聴いてみたいという新たな動機も見逃せません。

そこで今注目を集め、実際人気となっているミドルクラスからハイエンドグレードのD/Aコンバーターを8機種、その優位点、人気の秘密を探りながら取り上げてまいります。

■ 人気のD/Aコンバーター 8機種をピックアップ

■ Mytek Digital 『 Manhattan DAC II 』
 Silver/Black/Goldの3色

Mytekのコンシューマー用としては最上位のD/Aコンバーター。DACチップにはESSのフラッグシップDAC「ES9038PRO」を搭載。これに、フェムトクロックと独自のジッター低減回路を組み合わせて、DACチップの真価を引き出すとともに、デジ・アナを独立電源とすることでノイズとクロストークを徹底的に低減しています。

話題のMQAのフルデコーダー、アナログ式と32ビットデジタル式の内蔵アッテネーターやMM/MC対応のフォノ入力も装備。振動対策や電源ケーブルをグレードアップすることで、更に音質を追い込めます。さらに、オプションカード(高精度フォノ・アナログプリアンプカード、ネットワークカード)によるグレードアップも可能です。

サウンドはプロの世界で鍛え上げられたMytekならではの芯のしっかりした安定度の高いもので、電源の強化がダイナミックスや瞬発力をさらに高め、音楽的な説得力は超一流です。100万円を切るD/Aコンバーターの中ではダントツの完成度の高さです。




■ Mytek Digital 『 Brooklyn DAC+ 』
 Silver/Blackの2色

元々、スタジオでのリファレンスとしての音質を備えたUSB-DACとして開発されました。DACチップにはESS「ES9028PRO」を採用。超高精度のフェムトクロックを搭載。アナ/デジの2通りのアッテネータを装備、フォノ入力も持ち、DACプリとしても機能します。勿論MQAにもフル対応です。

サウンドは深く厚みのある低域、エネルギーに満ち溢れた中域、高域の圧倒的な情報量、厚みのある豊潤なサウンド、生音のような立ち上がりや響きを再現します。ハイエンドの王道を行く安定感のあるサウンドです。コストパフォーマンス抜群で大ヒット中です。




■ SOULNOTE 『 D-2 』
 Silver/Blackの2色

業界で初めてESS「ES9038PRO」を4個搭載し、それにSOULNOTEの得意技「完全対称無帰還ディスクリートアンプ」を組み合わせています。マスタークロックには超高精度のTI「LMX2594」を採用。これは測定器やレーダー用に開発されたジッター45fsという世界最高レベルのものです。

また、従来のオーバーサンプリングモードのデジタルフィルターに加え、デジタル領域における無帰還化とも言える「NOS」モードを採用。オーバーサンプリングのインパルス応答では避けられないプリエコーやポストエコーが発生しません。リアルで自然な音質、空気感をもたらします。画期的なデータ転送方法である「Bulk Pet」も採用。

サウンドはスケールの大きな安定感のあるもので、アナログを彷彿とさせる立体的で、生き生きとした、吹っ切れ感のあるものです。圧倒的な情報量の多さ、細部の表現力、力強く伸びきった低音は正確無比で、説得力のある国産屈指のハイエンドサウンドを実現。




■ SOULNOTE 『 D-1N 』
 Silver/Blackの2色

ESS「ES9038PRO」2基を「モノラルモード」で使用。「ES9038PRO」と「無帰還ディスクリートアンプ」のコンビネーションにより、オペアンプ(IC)では得ることができない、エネルギーに満ち溢れた生々しい音楽再生を実現。1ps以下という、超低ジッタークリスタルを採用。新たに上級機同様、「NOS」モード採用して、バージョンアップを果たしました。

サウンドは非常に透明度が高く鮮烈で抜けの良いものです。ストレートで立ち上がりが良く、音程はしっかりして、安定感があります。音楽を実に楽しく聴かせてくれます。ミドルクラスの国産D/Aコンバーターでは屈指の実力機です。




■ cocktail Audio 『 X45Pro 』
 Silver/Blackの2色

本機はデジタルオーディオの魅力を存分に手軽に味わえる超多機能な製品で、CDのリッピング、メタデータの管理、ファイル音源やネットワークでのストリーミング再生はもちろん、CDソフトの直接再生まで1台で行えます。もちろん、MQA-CDの再生も可能です。

13mmの極厚のフロントパネル、筐体は厚手のアルミプレートに精密な切削加工した総アルミ仕上げです。背面にはストレージ用のスロットを装備。アナログRCAとPHONO入力が1系統ずつ、出力はXLRとRCAが1系統ずつ装備。さらにFMチューナーまで内蔵。

サウンドは筐体の確かさやS/Nの良さから、制動力のあるしっかりしたスケール感のある低域に、厚みのある中域、ヌケの良いハリのある高域が加わり、情報量も圧倒的です。機能満載でこの音質を実現したことで、cocktail Audioの実力を再認識させられました。




■ cocktail Audio 『 X45 』
 Silver/Blackの2色

最先端のデジタルフォーマットに対応し、音質に磨きをかけたマルチメディアプレーヤー。デュアルDAC搭載、DSD 11.2MHzにも対応したミュージックサーバー。CDを簡単に様々なフォーマットでリッピングでき、もちろんCD再生も可能です。

本体背面には記録媒体用のスロットを装備。MQA-CDも再生可能な新時代のCDプレーヤーでもあります。




■ iFi-Audio 『 Pro iDSD 』


PCオーディオの最先端を走り続けて来たiFiオーディオ。その集大成ともいえる製品です。他の追随を許さないPCM 768kHz、DSD 24.6MHzの圧倒的なハイレゾ再生に対応。A級・真空管バッファ、フェムト秒精度のマスタークロック、すべての入力にガルバニック・アイソレーションが施されています。

同社初のネットワークプレーヤー機能まで搭載。MQAにも対応予定です。サウンドは鮮度が高くキレの良い鳴りっぷりの良さが魅力です。




■ M2TECH 『 Young III 』


海外製としては異例な程のリーズナブルなD/Aコンバーター(USB-DAC)+プリアンプ。DACチップはTI「PCM1795」で、PCM/DSD(11.2MHz)ともにネイティブで対応。電子ボリュームにはCirrus Logic「CS3318」を採用し、プリアンプとしても十分な実力を備えています。

サウンドは、実にハリのある若々しいもので、脚色を一切感じさせない生々しさが魅力。中低域には弾力感、高域には爽やか感があります。

■ 最後に
今回はいま注目を集め、実際に市場で人気のある製品ばかりをご紹介しました。いずれもスペック的には、PCオーディオ黎明期とは雲泥の差があり、サウンドにおいてもいわゆるデジタル臭さを全く感じさせない、ハイエンドオーディオ特にレコード再生ともほぼ遜色ないレベルにまで達しているのは間違いありません。

そしてお手持ちのCDライブラリーを生かすためにも、今こそ最新・高性能のUSB-DAC搭載D/Aコンバーターを導入されてみてはいかがでしょうか。

MQA-CDを含め『 PC&ハイレゾオーディオ 』が、ますます面白くなってきました。(あさやん)

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高級オーディオ情報!

  • 下記店舗では、ハイレゾからアナログまで、Accuphase・B&Wなどのハイエンド オーディオ製品やオーディオアクセサリーが充実。試聴室完備で比較試聴も できます。

    日本橋1ばん館 4F
    (大阪 日本橋)

    三宮1ばん館 B1F
    (神戸 三宮)