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2019年12月 6日 (金)

アキュフェーズから、新フラグシップ・プリメインアンプ『 E-800 』登場!!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
アキュフェーズの近年のアンプにおける技術革新はめざましいものがあり、このコーナーでも何度となく「まだやることがあった!」「さらに頂点を極めた!」などのタイトルで同社の製品を取り上げて来ましたが、その集大成が、今回ご紹介する『 E-800 』だといえます。

それでは、その集大成ぶりを詳しく見て参りましょう。きっとアキュフェーズが持つオーディオ技術の粋を集めて完成させたのだと納得されることでしょう。



■ 音元出版主催《 オーディオ銘機賞 2020 》金賞受賞
アキュフェーズは今年(2019)から2022年にかけて発売する同社の《 創立50周年記念モデル 》の第一弾として、プリメインアンプのフラッグシップモデル『 E-800 』を発売。プリメインアンプとしてアキュフェーズ史上最高のスペックを目指して開発したという純A級プリメインアンプです。プリアンプ「C-3850」とA級パワーアンプ「A-250」などの技術を投入して、セパレートアンプのクオリティをプリメインで実現したとしています。

同社の設立はご存知の通り1972年6月1日です。恐らく今後2年ほどかけて各ジャンルのフラッグシップ機をリニューアルしていくものと思われます。その第一弾が『 E-800 』という訳です。これからの同社の製品展開が非常に楽しみになってきます。

まずはその外観です。一見するとパワーアンプかと見紛うほどの堂々たる寸法の筐体です。横幅465mmこそ、同社の他のコンポーネンツと共通ですが、その高さは実に239mmと、「E-650」より約5cmも背が高くなっています。重さも「E-650」より10kg以上重い35.9kgでプリメインアンプとしては限界とも思える超重量級です。

■ 大型パワーアンプ並の『 電源の構成パーツ 』

電源の構成パーツもプリメインのそれではなく、大型パワーアンプ並の新開発の大容量トロイダル・トランスと、こちらも新開発(材料と内部構造を吟味)の実に60,000μFの平滑用のアルミ電解コンデンサ(「E-650」は50,000μF)を搭載するなど違例尽くしです。

8Ω負荷での定格出力は純A級で50W(最大出力:90W)にも達しています。しかも4Ωで100W(165W)、2Ωで200W(272W)とリニアで、1Ωの超低負荷(音楽信号)でも300W(360W)の大出力を保証しています。

■ 『 S/Nの改善 』『 ダンピングファクターの向上 』

次に回路を見てまいりましょう。最近のアキュフェーズ製品に見られるこだわりには、【 S/Nの改善 】と【 ダンピングファクターの向上 】が挙げられます。

【 S/Nの改善 】

プリアンプ部には今やアキュフェーズのお家芸ともいえる《 AAVA※ 》方式のボリューム・コントロールを採用していますが、それには最上位の「C-3850」で採用している《 Balanced AAVA 》回路を凝縮して搭載しているとのことです。

パワーアンプ回路の入力部を「C-3850」のバランス入力アンプでも実績のあるアンプ回路とすることで、入力から出力に至るまで完全バランス構成となり、理想的な信号伝送を達成したのです。結果、S/N(ボリュームMAX時)は107dBを達成。全ボリューム位置において「C-3850」に匹敵する低雑音性能を実現しています。これは同じ《 Balanced AAVA 》が搭載され、究極といわれた「E-650」の105dBをも凌ぐ画期的な数値です。

※《 AAVA 》とは、可変抵抗ボリュームを使用しないボリューム・コントロール方式で、音楽信号(電圧信号)を16種類の電流信号に変換(重み付け)し、この中からボリュームの位置に応じて最適な組み合わせを選択。この選択した電流信号を1本の電流信号に合成して再度電圧に戻す、完全なアナログボリュームです。

【 ダンピングファクターの向上 】

パワーアンプ部の出力素子は、電気的特性が優れ、熱的に非常に安定した動作のパワーMOS FETによる6パラレルプッシュブル駆動としており、アンプ出力の低インピーダンス化によってスピーカーの定電圧駆動を実現したのです。増幅部には、超低雑音インスツルメンテーションアンプを導入し、驚異的なS/N比を実現しています。

パワーアンプのNFBをスピーカー端子の直近から信号に加えGNDからも帰還を掛ける《 バランスド・リモート・センシング 》化すると共に、プロテクション基板を配線のないスピーカー端子直結としています。更に出力信号の切断に機械式リレーではなく「A-48」と同じ長期信頼性に優れたMOS-FETによる半導体スイッチにすることで、出力回路を徹底的に低インピーダンス化してダンピングファクターを1000と大幅に改善し(「E-650」は800)、スピーカーの特性を最大限に引き出すことが可能となったのです。

保護回路も充実しており、ショートによる異常な大電流を検出したり、ヒートシンクに取り付けられた温度センサーが異常な温度を検出すると、MOS-FETスイッチをOFFにし、メーターランプをフラッシング(点滅)して異常を知らせてくれます。更に出力段のMOS-FETのアイドリング電流を下げて温度が上がらなくする回路が追加されており、純A級アンプとしては非常にユーザー・ファーストな機能です。

【 拡張性も充実 】

バランス入力端子”BAL 2”を追加して「C-3850」と同じバランス入力数としています。リアパネルにはオプションボード増設スロットを2箇所設けており、別売のUSB/光/同軸端子を備えたデジタル入力ボード「DAC-50」、アナログ入力ボード「AD-50」、ライン入力ボード「LINE-10」をお使いになることで、更なる機能強化が図れます。「DAC-50」では本機でのサンプリング周波数の表示も可能で、kHz/MHzの切り換えもできます。

パワーメーターのバーグラフのドット数を、「E-650」の26ドットから30ドットに増やして-50dBの目盛りまで刻んでおり、滑らかに小音量時まで読み取りが可能です。文字盤の文字も大きくなっています。またボリュームノブとセレクターノブの周りのリング(台座)を「C-3850」と同様のより高級感のあるデザインにしています。勿論アルミの押し出し材を使用した重厚なリモコン、5芯マルチ構造による極太のOFC導体を採用した色づけの少ない電源ケーブルが付属しています。

■ 『 E-800 』の音質
試聴は先日開催された「大阪ハイエンドショー」のアキュフェーズブースで確認しました。

セパレート(「C-3850」+「A-250」)との比較では、音色的にはほぼ互角で、低域に関しては『 E-800 』の方がソースによって厚みを感じる場面もあり、全く遜色のないレベルでした。また中域の充実度はプリメインのレベルではなく、まさに高級セパレートの世界でした。

安定感もプリメインのそれではなく、とにかくぶれない余裕を感じました。これこそ充実した大規模な電源のお陰だと思います。一方で小音量時でも密度感が維持されており、純A級アンプならではとも感じました。いわゆる、プリメインではもちろん高級セパレートでも難しい非常に貴重な、大音量にも小音量にも強い万能型のアンプといえます。

S/Nが良いためか音の見通しが非常に良く、音場が広々と感じられ、その中の楽器の前後感や会場の奥行き感が実に明瞭に感じました。また音数が多く感じるほど情報量がたっぷりで、従来聴き取れなかった細かなニュアンスまで感じられたのでした。

そして何より音楽性の高さが、プリメインアンプはもちろん、セパレートでも表現しきれないような本物の音楽を味わうことができたのには心底驚きました。ボーカルは生しく、ジャズは力強く、クラシックはしなやかに、ミュージシャンがまさにそこにいるのです。これは”事件”です。

アキュフェーズの技術資料によりますと、『 E-800 』を設計したエンジニアは、セパレート「C-3850」「A-250」の組合せを超える音をプリメインアンプで目指し、時間をかけて音をつくり上げたのだとしています。

その成果が十分発揮された非常に完成度の高いサウンドに感動し、セパレートが本当に必要なのかとの疑問まで湧いてきました。筆者のアキュフェーズに対する信頼度が益々高まりました。
(あさやん)

2019年12月 3日 (火)

話題騒然!! ELAC(エラック)から最新鋭《 CARINAシリーズ 》登場!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回は、オーディオ業界のカリスマ「アンドリュー・ジョーンズ」氏が手掛けた初の「JETツイーター」搭載スピーカー ELAC《 CARINAシリーズ 》をご紹介します。

その優位性から最近目にすることが多くなってきた「エアモーション・ドライブ方式」のパイオニアであるELACが、長年手掛けてきた「JETツイーター」。その名ドライバーを著名なスピーカー・エンジニアがどう使いこなしたのか、大注目です。


■ ELAC(エラック)について
ELACは今やドイツを代表するスピーカー専業メーカーですが、私のようなオールドファンには《 ELAC=カートリッジ 》がどうしても頭に浮かびます。かの大ベストセラー「STS-455E」はMM型としてはSHURE「V15-TYPE3」と双璧で、多くのユーザーが使っていました。SHUREの切れ込みの良さとは対照的な穏やかで温かみのある音で、クラシックやボーカル再生には欠かせませんでした。

ELACの創業は1926年(昭和元年)ですから、90年を超える老舗オーディオメーカーです。創業当時は潜水艦用のソナーなどの製造を手掛けていて、オーディオメーカーとしてのスタートは戦後の1945年です。音の歴史は70年余りということになります。最初に成功したのはレコードプレーヤーで、「ミラコード」というヒット・モデルがありました(2017年復活)。1957年にはカートリッジを開発。MMカートリッジの特許を取得したのでした。

1980年代のCD登場後、本格的にスピーカー開発を始めました。4PIリボン・ツイーター、そしてハイルドライバーというユニークなアイディアを自らの手で改良を重ね、高性能オリジナル・ユニットに昇華させることに成功。日本には1997年、初めて「JETツイーター」を搭載した「CL 310 JET」が入って来たのですが、同時にその年、一世を風靡したカートリッジの供給を終了したのでした。

20数年に及ぶELACのスピーカー開発ですが、そのターニングポイントとなったのは、2015年著名なスピーカー技術者である「アンドリュー・ジョーンズ氏(以下ジョーンズ氏)」を同社に迎え入れたことです。ジョーンズ氏は、数々の傑作スピーカーを生み出してきた“天才”エンジニアとされる人物で、KEFにて11年、INFINITYで3年、1997年からは日本のTADにて17年にわたりスピーカーを設計してきたオーディオ業界のカリスマです。

そして、ジョーンズ氏がELAC入社後に手掛けた第一弾が「Debut Line」で、ジョーンズ氏によってデザインされたウーファーとツイーターを搭載したエントリークラスのスピーカーでした。その後「Debut Line」は2.0へと進化し、ドライバー・ユニット、ネットワーク、エンクロージャーといった主要アイテム全てが新規に開発され、エントリー・ラインでありながらも、ジョーンズ氏のキャリアの中で培ってきたノウハウが惜しみなく注がれ、大きくそのパフォーマンスを向上させたのです。

《 CARINAシリーズ 》は、ジョーンズ氏がELACの既存モデル(中心モデルともいえる「240 LINE」)のリファインを手掛けるのは今回が初めてということもあり、その点でも注目されます。ちなみに《 CARINA(カリーナ) 》とは、竜骨(船底の隆起部分)のことで、先にリリースされた「VELA」はラテン語で帆を意味しています。いずれもELACがあるドイツのKIEL(キール)がバルト海に面していることに由来しているようです。

■ JETフォールデッド・リボン・ツイーター
ELACのハイエンドスピーカーに搭載されている「JETツイーター」は、1970年代 ESSというメーカーが出した「amt1」というスピーカーに初めて搭載された「ハイルドライバー」を進化させたものです。「ハイルドライバー」はオスカー・ハイル博士が発明した「Air Motion Transformer」のことで、当時私はその繊細さや透明感に大変感動したものです。

その見た目も美しいアルミとパルプのハイブリッドドライバーであるELACの「JETツイーター」は、サウンドは勿論のこと、外観も非常に魅力的なものです。「JETツイーター」こそ、ELACのハイエンドスピーカーの人気の源でもあり、今や《 ELAC=JETツイーター 》と言っても過言ではありません。

今回《 CARINAシリーズ 》に採用された新バージョン「JET folded ribbon」は、従来からの「JETツイーター」の基本構造は受け継ぎ、応答性の良さや高耐入力などの圧倒優位点を維持しながら、「JETツイーター」をもっと幅広いラインアップで使うべく開発された新設計ドライバー・ユニットです。基本性能を損なうことなくコストダウンに成功したこの「New JET」が完成したことで、従来のクラスの常識を打ち破る、画期的なスピーカーの誕生に至ったのです。

「JET folded ribbon」は、呼称にフォールデッド・リボンとありますが、従来のJETと同様の製作工程で製造されるダイナミック型ドライバー・ユニットです。ただ現行の「JET-V」とは区別されており、高域の周波数特性は30kHzまでと実用的な数値となっています(「JET-V」は50kHzまでカバー)。

■ コンパウンド・カーバチュア(複合曲率)135mmアルミニウム・コーンウーファー
ウーファーも新たに設計されたアルミニウム・コーンドライバーを採用。振動板は、従来のELAC製品で見慣れたクリスタル形状ではなく、異なる曲率を組み合わせたコーン形状を採用しており、この特殊な形状により、分割振動の共振周波数を巧みにコントロールすることで、分割振動による歪みを再生帯域外に追いやっているのです。

またポールピース(ボイスコイルの中心にある導磁率の高い鉄製の円柱)にベント構造(通気口)を設けることで、ボイスコイルの冷却とウーファーダクト内の空気排出をスムーズに行なえ、強力な磁気回路で駆動される大口径ボイスコイルの反応が良くなり、低域の音質向上にも繋がったようです。

■ 高品位なエンクロージャー
《 CARINAシリーズ 》のエンクロージャーは、仕上げは艶消しのサテンブラックで、断面はリアを絞り込んだ台形形状、コーナーは緩やかなラウンド形状となっています。このため、外形寸法の数字から想像するよりスリムに感じます。エンクロージャー内部は、上級機「VELAシリーズ」と同様リブを効果的に入れることで強度を高め共振を抑えているようです。十分な剛性の高さを感じます。

また、正面からはちょっと見分かりにくいのですが、フロア型は勿論ブックシェルフ型もスチール製フレームに固定されており、底部にバスレフポートが下向きに設けられて、耳障りな風切り音をシャットアウトしており、壁などに左右されず、設置環境の影響が受けにくくなっています。

エンクロージャー内のクロスオーバー・ネットワークは、ツイーター用とウーファー用それぞれ独立した基板で構成されており、上級機と同様の設計だとのことです。スピーカーターミナルはバイワイヤリング接続に対応しており、造りが堅牢で太めのスピーカー・ケーブルもしっかり固定できます。

■  《CARINAシリーズ》の音の印象

いずれのスピーカーもJETツイーターとウーファーが近接しているため、ボーカルや楽器がピンポイントで定位し、不自然に広がったり曖昧に感じることはありません。特にボーカルは滑らかで、かすれたり、きつく感じることは全くありませんでした。また超高域のエネルギー密度が高く、線が細くなってしまうことがなく、芯のあるしっかりした高域が再現されました。これこそ新作JETツイーターの威力で、コーンやドームでは絶対に叶わないな表現力だと感心しました。

一方、JETツイーターの応答の良さに合わせるべく新たに開発されたウーファーだけあって、フロア型は勿論ブックシェル型でも低域から中低域にかけても、曇ったりヌケが悪くなることがなく、とにかく歯切れの良さ、音離れの良さは格別で、全帯域にわたってスピード感が統一されていると感じました。そして音楽の鮮度が高く感じられ、生々しいリアル感も十分味わえます。

特にブックシェルフの『BS243.4』の小音量時のリアリティは必聴に値します。一方低域の量感を求めるならやはりフロア型の『FS247.4』に一日の長があります。

■ 最後に

《CARINAシリーズ》は、ELACとしては「VELAシリーズ」とともに中心的な存在で、新たに開発したJETツイーターを採用したことからも、そしてジョーンズ氏を起用したことからも分かるように、同社の主力機種という位置づけです。

音楽情報の細部まで引き出すクオリティの高さ。そして音楽を楽しませる有機的な躍動感は、ELACが築いてきたサウンド・パフォーマンスに新しい魅力を加えたとも言えます。

Joshin-WEBがELAC製品を本格的にプロモートする第一弾が《CARINAシリーズ》です。自信を持ってお勧めします

(あさやん)

2019年11月28日 (木)

性能の極限に迫る!! Accuphase『 E-380 』が登場!!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
Accuphaseのメインストリーム《 300番台 》に最新鋭機『 E-380 』が登場!! 本日は、徹底解説いたします。

Accuphaseから4年ぶりとなる、同社のプリメイン中核機でもある《 300番台 》の最新鋭機『 E-380 』が登場。前作の「E-370」はプリメインとしての性能の高さは勿論、その信頼性においても、このクラスのハイエンドプリメインとしては圧倒的な人気を獲得しました。そんな完成度の高い「E-370」に、さらにどのように改良の手を加えたのか、興味津々です。



■ Accuphase 300番台とは
最新鋭機『 E-380 』をご説明する前に、Accuphaseのメインストリーム《 300番台 》の歴史に少し触れておきましょう。300番台のプリメインアンプのルーツは、バブル真っ只中の1987年12月まで遡ります。当時はオーディオ業界もピークを迎え、バブルに沸いていた時代でした。

その後、3~4年おきにモデルチェンジを重ねつつ、確実に進化を遂げ、いずれも人気を博して来ました。

「E-305」(1987.12)→「E-305V」(1991.11)→「E-306」(1994.12)→「E-306V」(1997.12)→「E-307」(2000.12)→「E-308」(2004.04)→「E-350」(2007.11)→「E-360」(2011.11)→「E-370」(2015.11)」と変遷し、今回の『 E-380 』が記念すべき10世代目となります。

「まだ何をすることがあったのか?」「何が出来るのか?」ほとんどのオーディオマニアの方は、疑問に思われることでしょう。かく言う私自身もそうでした。実際に『 E-380 』の音を聴くまでは・・・。

■ いきなり、核心に迫る
『 E-380 』を詳しく見ていく前に、先に結論をバラしてしまいますと、前作「E-370」とサイズ的には全く同じで、重量も僅か100gアップの22.8kgです。しかし、パワーは20%もアップ(180W/4Ω、120W/8Ω)したのです。

従来の感覚では、プリメインアンプの筐体サイズとパワーには正比例とは言わないまでも、確かに相関関係はあると感じていました。実際Accuphaseもそう考えていたようです。

開発当初それは容易ではなく、試行錯誤を繰り返した末に辿り着いたのが、電源部や電力増幅段の強化で、それが実を結んだのです。たかが20Wですが、されど20W。実際出てくる音は確かに違いました。「E-370」との比較試聴結果は最後にございます。

それでは、Accuphaseが『E-380』に注入した独自技術を、4項目に分けて、ご説明いたします。

■ 1.《 AAVA(Accuphase Analog Vari-gain Amplifier)方式ボリューム・コントロール 》の採用
あえて「Analog」を入れているのは、デジタル・ボリュームと違うことを強調したかったからだと思います。

抵抗体を使う一般的なボリュームと違うため、ちょっと見、デジタルボリュームではないか。まして、リモコンでボリューム調整ができるのですから当然です。

しかし、《 AAVA 》は違います。

音楽信号(電圧信号)を16種類の電流信号に変換(重み付け)し、この中からボリュームの位置に応じて最適な組み合わせを選択。この選択した電流信号を1本の電流信号に合成して、再度電圧に戻すのです。《 AAVA 》基板の上位の電流信号を扱う部分(VIアンプ)に改良を加え、全体のインピーダンスを1/2に下げて低インピーダンス化を図りました。

これによって何がどう違うのでしょう。

デジタル・ボリュームは音楽信号を一旦デジタル信号に変換して音量調整するため、どうしてもデジタル特有のノイズを回避できず、クールで痩せぎすのサウンドであったり、味わいのない無機的な音というのがマニア共通の認識で、多かれ少なかれ体感されたことだと思います。

一方、一般的なアナログ・ボリュームは、入力信号を可変抵抗器(いわゆるボリューム)や固定抵抗器の組合せで一旦減衰させた後、固定ゲインのアンプで増幅して音量を変化させています。そのため、抵抗体を通ることでノイズが多くなり、回転角度で異なる性能となってしまうのです。結果、S/N比や歪率の低下を招くとともに、可変抵抗器の接点が常に空気に触れていることで経年変化が起こり、よく経験するガリを発生させてしまうのです。信頼性に難ありです。

このように《 AAVA方式ボリューム・コントロール 》はデジタルのようでアナログであり、しかも可変抵抗器を使わない画期的なボリュームなのです。このため、ボリューム位置により周波数特性が変わることがなく、音質変化もありません。また、アンプのゲインで音量を直接調整するため、高S/N比、低歪を実現でき、しかも回路全てが電子部品でできているため、長期にわたって信頼性が非常に高いのです。

ボリュームノブの感触も高級機のそれと同様の滑らかさで適度な粘性もあります。さらに《 AAVA 》のメリットとしては、可変抵抗器ではないため左右の音量バランスが正確であり、左右のチャンネルが独立した回路となるためクロストークがなく、チャンネル・セパレーションも大きく取れています。バランスコントロールやアッテネーター機能は《 AAVA 》で行うため、音楽信号が余分な回路を経由することがなく高音質に結びつくのです。

《 AAVA 》はAccuphaseの最上位のプリアンプ「C3850」をはじめ、全てのプリアンプ、プリメインアンプに採用されており、同社製品への信頼性がさらに高まったのです。特に『 E-380 』では、前作の「E-370」から回路の見直しによる低インピーダンス化や高精度な薄膜抵抗を多く採用することで、定格出力時のS/N比が2dB改善できたとのことです。

■ 2.電力増幅段と電源部の強化で定格出力がアップ
出力素子は前作と同じバイポーラ・トランジスターによる2パラレル・プッシュプルなのですが、『 E-380 』ではヒートシンクを大型化し、放熱効率を上げ、電源部の電源トランスを新開発の大容量EI型トランスにして強化しています。

さらに、電解コンデンサーを本機のために開発したカスタム仕様の大容量コンデンサーとし、容量を前作の30,000μFから33,000μFに10%大容量化することで、「E-370」と同サイズでありながら出力の20%アップを達成したのです。

歴代の《 300番台 》の定格出力が100W/8Ωであったのに対し、その殻をついに破って120W/8Ωとしたのです。これは数字以上に大きなことです。

■ 3.ダンピングファクターもアップ
ダンピングファクター(DF)は、スピーカーの逆起電力を吸収して、スピーカーをコントロールする能力示す指標ですが、前作の「E-370」に比べ25%も向上し、実にDF:500を達成したのです。

このクラスのプリメインアンプではちょっと見掛けない数字で、《 300番台 》の初代機「E-305」でDF:100、「E-350」でもDF:120でしたから、その差は圧倒的です。これはプロテクション回路に、一般的なリレーに代えて使われている「MOS-FETスイッチ」を、最上位のパワーアンプ「A-250」と同じ部品にすることや、基板パターンをより太く短くすることで実現できたとのことです。

■ 4.その他の進化点
「MOS-FETスイッチ」を使った保護回路は、配線をなくしスピーカー端子と直結されており、リレーのような機械的接点がなく、劣化などの経年変化がないため信頼性の高いものです。

しかも、定格電流が160Aと非常に大きく、ON抵抗(通過時の抵抗)が0.002Ω(E-370は0.0026Ω)と低くなり、音質の劣化も防いでいます。そして、スピーカー端子がショートされた時やパワートランジスターが異常発熱した場合、スピーカー出力をOFFし、メーターランプを点滅させて知らせてくれます。

音質には直接関係のない改良ですが、大型のパワーメーターの目盛りを-50dB(従来-40dB)まで増やすことで、小音量時でもパワーが視認できるようになりました。

また、リアパネルのオプションボード増設スロットにデジタル入力ボード「DAC-50」を使用した場合のサンプリング周波数の表示が、PCMで384kHz(前作192kHz)まで、新たにDSDも11.2MHzまで対応しています。

■ 試聴しました
このように過去9世代にわたって改良を積み重ねてきて、まだやることがあるのかと当初大いに疑問でした。その上で、新しく注入した独自技術の数々を技術者に説明していただいても、なお「本当に良くなっているの?」という疑問はなかなか消えませんでした。

今回、『 E-380 』を前作「E-370」と比較しながら試聴しました。スピーカーは、B&W「805D3」を使用しました。



「E-370」での音は、当webサイト専用試聴室でのリファレンスアンプでもあり聴き慣れた音で、安定したまさにAccuphaseの音で、特に不満を感じることもありませんでした。

しかし、『 E-380 』に変えた瞬間サウンドが一変したのです。

透明感が上がり、「E-370」でほんの少し感じた色付けもなくなり、生の音のような滑らかな清々しいサウンドが広がったのです。音の粒子が細かくなり、高音域の僅かなディテールも感じられるようになりました。

低域方向への伸びも顕著で立ち上がりや締まりが良くなり、厚みが加わり雄大で落ち着いたサウンドです。これは、ダンピングファクターが効いているように感じました。

S/Nが良くなったためか響きが豊かになり、小音量時に少し感じた、くすみや歪み感が消えていました。このためボリュームを上げていってもうるささは感じなくなっています。

女性ボーカルもリアルで顔の表情まで感じられる位でした。しっとりと落ち着いた魅力的なもので、いつまでも聴いていたくなりました。

これはハッキリ言って別のアンプであり、間違いなく1ランク以上グレードが上がったと感じました。性能の極限に挑戦したAccuphaseの技術陣の凄さを改めて感じます。とにかく、このクラスのアンプとしての完成度の高さは海外製を含めダントツだと思います。
(あさやん)

2019年11月25日 (月)

KRIPTONスピーカーの集大成!? 『 KX-5PX 』完成!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
本日は、完成度の高かった KRIPTON「KX-5P」のさらなる高音質を目指し、KX-5シリーズの三代目として完成した『 KX-5PX 』をご紹介。14年間で16モデルを商品化してきた《 メイド・イン・ジャパン 》の匠・渡邉氏の会心作を見てまいりましょう。



■ KRIPTON(クリプトン)とは?

KRIPTONの歩み
1984年創業の会社で、2005年にスピーカー事業に参入するまでは、業務用の映像システムや情報ネットワーク、eラーニングの構築など、既成概念にとらわれない発想と行動、挑戦をベースに、社会に貢献できる会社を目指してきた最先端の企業です。(ちなみに「クリプトン」とは、かのスーパーマンが生まれた星です)

KRIPTONは、”国産スピーカーのレジェンド”ビクター(現JVC)出身の”渡邉 勝氏”を招いて、スピーカーを開発したのが始まりでした。渡邉氏は、知る人ぞ知る銘機「Victor SX-3」の開発者であり、それは氏が20代の時に開発したと言うのですから、まさに天才です。私自身も40数年前、その「SX-3」からオーディオの泥沼にはまってしまった一人です。

2005年発売のKRIPTON「KX-3」は、その型番といい、2ウェイの完全密閉型で、クルトミュラーコーンに絹のソフトドームという、まさに「SX-3」の再来の様なスピーカーでした。貴重な[アルニコ・マグネット]による壺型内磁方式のヨークをウーファーにもツィーターにも使うという価格の割には贅沢な仕様で、それは渡邉氏のこだわり以外の何ものでもありません。

そのアルニコならではの瑞々しく滑らかでヌケの良い正統派のサウンドは、当時もう既に海外製に席巻されつつあった国産スピーカーにあって、海外製に勝るとも劣らぬ音楽性があり、仕上げも美しく、小さいながらも風格さえ感じたものでした。

その後「KX-3M(2006)」「KX-3P(2007)」「KX-3PII(2011)」「KX-3Spirit(2018)」と続き、現在に至っています。その派生として「KX-1(2014)」「KX-0.5(2017)」が登場。そしてこのコーナーでもご紹介した、今年(2019)発売の「KX-0.5P」と進化を遂げて来たのです。

一方、2009年にはフラッグシップのフロア型スピーカー「KX-1000P」を投入。続いて2010年2ウェイブックシェルフの最上位機種「KX-5」、そして2015年クリプトンスピーカー発売10周年記念として、ピアノブラック仕上げの「KX-5P」を発売。現在に至っています。

■ 最新作 KRIPTON『 KX-5PX 』の実力は
『 KX-5PX 』は、ブックシェルフ型の最上位のリファレンスという位置付けのモデルで、渡邉氏のこだわりである《 アルニコ・マグネット 》《 ピュアシルク・ツィーター 》《 クルトミューラーコーン・ウーハー 》《 密閉型エンクロージャー 》を徹底的に踏襲。さらに新たなノウハウを加味して完成した、これぞ《 KRIPTONスピーカー 》といえる同社のオリジナリティ溢れる製品に仕上がっています。

■ こだわりポイント1:アルニコ・マグネット
超貴重なアルニコ・マグネットを全ユニットに採用し、しかも初号機「KX-3」と同じ壺型内磁方式(上図)のヨークをウーファーにもツィーターにも使うという他に類を見ない贅沢極まりない仕様です。

アルニコ(Al-Ni-Co)は、アルミニウム (Al)、ニッケル (Ni)、コバルト (Co) などを原料として鋳造された磁石で、ネオジウムやサマリウムコバルトなどの希土類(レアアース)磁石と同程度の強い磁力を持っています。20世紀半ばまでは高級スピーカー(JBLやTANNOYなど)のマグネットとして使われていましたが、1960年代のコンゴ動乱によって原材料のコバルトが暴騰したため、より安価で造形の容易なフェライト磁石に主役の座を奪われたのでした。

しかし、筆者を含めた当時のオーディオファンは、その変更による音質の明らかな低下を目の当たりにしてショックを受けたものでした。

レアアースの不足は今も常態化しており高額なため、現在でもアルニコ・マグネットが使われているスピーカーは殆ど存在しないのが実情です。その貴重なアルニコを使用していると言うだけでもこの『 KX-5PX 』は魅力的ですし、何よりフェライトとの音質差を実感されたオールドファンにとっては、かつての夢を叶えるスピーカーと言っても過言ではないと思います。

■ こだわりポイント2:ピュアシルク・ツィーター
KRIPTONは、PCオーディオの黎明期からハイレゾ音楽配信サービス(現在終了)や、DVD-ROMによる音楽データの提供を行ってきた老舗メーカーであり、当初からハイレゾ帯域の再生には執念を燃やして来ています。

そのハイレゾの50kHzまでの超高域再生のためのツィーターには、砲弾型イコライザーが付いた35mm口径のピュアシルクリングダイヤフラム・ツィーターが使われています。さすがに前述のビクター「SX-3」当時のf特:20kHz、5cmソフトドームでは無理だということでしょう。そこは時代を感じます。

そして、ボイスコイルはOFC(無酸素銅)のエッジワイズ(角柱)線とし、アルニコ壺型内磁気回路との相乗効果で、超高域までリニアに再生できると共に、歪みが大幅に改善された結果、ハイレゾ音源の高品位再生が可能になったのです。

■ こだわりポイント3:クルトミューラーコーン・ウーファー
こちらも伝統の170mmクルトミューラーコーン・ウーファーです。クルトミューラーは、ドイツの会社で北欧産の針葉樹パルプ紙を柔らかく厚手に抄造したものに、充分な内部損失を持たせています。タンノイや、ヤマハのスピーカーの一部にも使われた、薄紫色の特徴のあるコーン紙です。

ボイスコイルはこちらもOFCですが、エッジワイズ線の4層巻ロングトラベルのボイスコイルとすることで、線積率を上げ、低域のリニアリティを改善。さらにアルニコ壺型内磁気回路と相まって能率を稼ぎ、駆動力が高く、大振幅時にも磁気回路から外れることなく、歪みの非常に少ないウーファーを完成させたのです。

また、エッジはリニアリティーと経年変化に優れたブチルゴムを採用することで、fo(最低共振周波数)を170mmのウーファーとしては類を見ない極限ともいえる35Hzに設計しています。これにより低域再生は勿論、ダイナミックレンジを拡大し、トランジェント(過渡応答)特性を大幅に改善できたのです。密閉型でありながら伸びやかで豊かな低域再生に貢献しています。

■ こだわりポイント4:密閉型エンクロージャー
エンクロージャーの板材には、18mm厚の針葉樹系の高密度(比重:0.8)のパーチクルボードを採用しており、表面仕上げはオール天然材の突き板に高級ピアノ塗装(ポリエステル塗装)の6面全部を高級楽器に匹敵する鏡面仕上げとしています。これにより不要振動を抑制し、優れた振動減衰特性により美しい響き、さらに音波が表面を伝わるスピードが速いためヌケの良いサウンドが実現できたのです。

そして、密閉型でトランジェント良く、深く沈み込む低音を実現するにはQo(低域制動)が重要との考えから、吸音材にもこだわりを見せています。同社は音響パネルなどのアクセサリーメーカーでもあり、吸音材についてのノウハウは豊富です。結果として、純毛の”低密度フェルト”と定評のある吸音材”ミスティックホワイト(ダイマーニ)”をハイブリッドにすることで、適度な制動特性を得て、豊かで伸びのある低音を実現したのです。

■ KRIPTONの更なるこだわり
【1】内部配線材に”PC-Triple C”採用

ウーファーには、同社が最近発売した「SC-HR1500」を採用。ポリエチレン芯にPC-Triple Cφ0.33×7本を6束にしてロープよりし、耐熱ポリオレフィン樹脂のシースで構成しています。PC-Triple Cと絹の介在により、低音の量感、トランジェント、S/N感に優れた音質を実現しています。

また、ツィーターにも同時発売の「SC-HR1300」を採用。マグネシウム芯線にPC-Triple Cφ0.7×6をロープよりし、ポリエチレン絶縁シースで構成しています。滑らかで透明感のある高域を実現できたのです。

いずれも同時進行で、スピーカーユニットの特長に合わせるべく試聴を繰り返しチューニングして完成させたとしています。

【2】低損失&低歪率のデバイディングネットワーク

歪みを極限まで抑えるべく、本機のデバイディングネットワーク素子には、直流抵抗の低い直径1.2mmのOFC線材による空芯コイルと、ケースにピッチ材を充填して振動を抑えた低損失メタライズドフィルムコンデンサーなどを採用しています。これらによってスピーカーユニットの本来のポテンシャルを引き出し、ユニットの絶妙なハーモニー、音楽のピアニシモからフォルテシモに至るダイナミックレンジ、そして自然な音場感の再現が可能になったのです。

【3】バイワイヤリング採用

ウーファー(LOW)と、ツィーター(HIGH)端子は、デバイディングネットワークで分割したバイワイヤリング端子とし、内部配線材と同じPC-Triple Cのショートワイヤーが付属しています。バイワイヤリングやバイアンプ駆動により、各ユニットの逆起電力による影響を回避することで、モジュレ-ション歪みを防ぎ、さらなる中高域の透明感のアップに繋がっています。

また、同社新製品のバイワイヤリングケーブル「SC-HR2000」をお使いになれば、簡単にバイワイヤリング接続ができ、KRIPTONが目指す本来の『 KX-5PX 』の高音質サウンドが実現できます。「SC-HR2000」は1本のケーブルに、バイワイヤリングのツィーター用とウーハー用の2種類のケーブルを組み合わせ、外径がφ11.5mmの特殊なケーブルです。通常のスピーカーケーブルのように左側、右側それぞれ1本ずつで簡単に配線できます。

そして、『 KX-5PX 』が誕生した大きな理由がここにあります。実は前作「KX-5P」に使われていた内部配線材のPCOCC-Aがご存知のように生産中止となったため、KRIPTONはそれに替わる新しいケーブルを探し、その結果”PC-Triple C”に辿り着いたと言います。さらにウーファー用とツィーター用に内部配線材を変えることで最適化を図り、「KP-5X」を超える音作りを目指したのです。そして、スピーカーケーブルから内部配線まで同じケーブルにすることで、さらなる高音質が得られたのだとしています。

その大きな理由は『 KX-5PX 』のウーファーユニットが前述のようにエッジワイズ線の平織りを4層に巻いているため、他社のユニットより逆起電力が大きく、バイワイヤリングによる効果が大きいとのことです。

■ 『 KX-5PX 』の音質は?
試聴は、バイワイヤリングケーブル「SC-HR2000」を使って行いました。前作にも増して高域の透明度がアップし、気持ちよく伸びきります。特にストリングスが綺麗で、倍音成分の再現性が確実に向上していると感じました。そして、中低域から下のエネルギーが増え、ふくよかさや厚みの表現は、従来の同社スピーカーを明らかに超えています。かと言って、サウンド全体に誇張感がなく、とにかく自然なのです。これこそ”チューニングの妙”であり、”渡邉マジック”だと思います。

こんな素晴らしい音の国産スピーカーに誇りさえ感じます。
(あさやん)

2019年11月21日 (木)

貴重な増幅素子SIT搭載!First Watt『 SIT-3 』の魅力を探る。~ 限定生産品:世界200台、国内30台 あと僅か! ~

ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回ご紹介します『 SIT-3 』は、First Watt専用の《SIT》出力素子(別名V-FET)パワートランジスターを使用したシングルエンド・シングルステージ純A級の最新パワーアンプです。超シンプル・高品質・低出力・ハンドメイドのこれまでの「SIT-1」「SIT-2」の設計思想と構造を受け継ぎながら、《SIT》出力素子の新たな可能性を追及したのです。



■ 米国のブランド First Watt(ファーストワット)とは

First Watt(ファーストワット)は、Pass Laboratories(パス・ラボラトリー)の創設者ネルソン・パス氏によるハンドメイド製品の米国ブランドで、彼のリタイアにあたって立ち上げたプライベートブランドでもあります。同社は、実効能率の高い高品質のスピーカーのために、非常にシンプルな回路構成のAクラス動作を採用した低出力オーディオアンプの開発を目指し、2005年に創立されました。これはパス・ラボ時代とは真逆のコンセプトです。

「増幅コンポーネントとしてのオーディオアンプはどうあるべきか。」その命題について実験を重ねたといいます。結論として、自然界におけるシングルエンド動作、理想的なアンプの増幅動作を達成するためには、三極真空管シングルアンプの音質だとしたのです。その魅力を半導体アンプで実現しようとFirst Wattは試みているのです。

また、「First Wattで最も重要視しているのは最初の1ワット」だともいいます。それは「1ワットでうんざりするような音が聞こえたら、500ワットのアンプの音を誰が聞きたいと思いますか?」との疑問から出た言葉だそうです。そうして、音質を最重視し、他に類を見ない低出力アンプで、しかもフィードバックがなく、単純なA級回路とすることで非常に高品位な音質を実現でき、高出力アンプに比べて多くのメリットのあるアンプが完成したのです。


■ Static Induction Transistor(SIT)とは

まずは《SIT》の説明から、和名は「静電誘導トランジスタ」、英語名「Static Induction Transistor(SIT))」といい、高周波特性を改善した電力用半導体素子です。FET(電界効果トランジスタ)の一種で、1950年かの有名な東北大学の故 西澤教授によって開発されました。静電誘導効果により3極真空管型の特性が得られ、高速・低損失の高忠実度増幅を可能にしたのでした。

私が初めて《SIT》という名前を知ったのは、1974年ヤマハが発表したパワーアンプ「B-1」でした。当時ヤマハは自社で半導体を作っており縦型FET(V-FET)といわれていました。ドライブ及びパワー段など随所に縦型FETを組み合わせて回路を構成していました。出力150W+150Wで消費電力440W、重量37kgという、当時としては超弩級パワーアンプでした。

当時は怪物アンプといわれ、鉄の塊という印象の黒く無骨で、当時のヤマハのプリメインアンプ「CA-1000」や、プリアンプ「C-2」などの優雅なデザインとは全く対照的でした。純正の《SIT》「2SK77」は、現在入手は全く不可能とのことで、修理は殆どできないといわれています。現時点では国内外を問わず《SIT》を作っている所はなく、供給も不可能とのことです。


■ 入手不可能なはずの《SIT》を導入した新製品『 SIT-3 』
その入手不可能のはずの《SIT》をFirst Wattの新製品『 SIT-3 』に使われているのは、どういう訳なのでしょうか。輸入元:エレクトリの小野氏にお話を聞きました。本機に使われている《SIT》デバイスは、「SIT-1」の設計にあたって、ネルソン・パス氏が大金を投資して、SemiSouthとPASSの共同開発で《PASS SIT》としてデザインされたといいます。

その特注の《SIT》デバイスの在庫が少なくなり、新たに製造ができない(発注数の単位が数千~数万個)ため、この『 SIT-3 』に使う分と、過去の製品を含めてのメンテナンス用を確保するため、世界200台、国内30台の限定生産になったとのことでした。

《SIT》素子は歩留まりが悪く、ネルソン・パス氏が望むレベルだと100個の内、数個しか合格しないのだといいます。よって『 SIT-3 』は最後の、そして非常に貴重な《SIT》搭載アンプとなってしまったのです。

『 SIT-3 』には「SIT-1」「SIT-2」と《SIT》出力素子の使い方に大きな違いがあるといいます。「SIT-1」「SIT-2」では《SIT》素子はソース接地で動作し電圧と電流の両方が増幅されるのに対し、『 SIT-3 』ではドレイン接地することで電流のみが増幅されます。

これこそ『 SIT-3 』最大のトピックで、ネルソン・パス氏が考案した《DEF回路》という新回路です。《SIT》素子を出力回路のNチャンネルに、そして厳選したMOS-FETをPチャンネルに使うという斬新な回路で、電圧は高品質ステップアップトランス(入力トランス)によって増幅されるという画期的なものです。

《SIT》素子は、どちらの方法でもフィードバックなしに適確に増幅動作を行いますが、ドレイン接地においては、より低歪み、低ノイズ、高ダンピングファクターが得られます。その代わり入力トランスが必要にはなりますが、同社は得られる音質向上に比べれば、妥協可能な小さな要素としています。増幅と二次高調波をはるかに低い歪み値で制御できるのです。


■ 『 SIT-3 』のサウンドは

サウンドについては、筆者が以前試聴した同社のステレオパワーアンプ「F7」(20W+20W 、JFET & Mos-FET)との違いを中心に、前出の小野氏にお伺いしました。

「F7」は、非常に透明度が高く、しなやかなサウンドで、楽器の倍音成分の再現性が真空管アンプのように柔らかく豊かでした。特に女性ボーカルとの相性は抜群で、声の瑞々しさや滑らかさは抜群でした。あらゆるソースに対してナチュラルかつ素直な立ち上がりと正確な音色の再現性は、余計なものが加わっていない、原音そのものを聴かせてくれていると感じたものでした。

『 SIT-3 』は、更に歪み感のない澄み切った、とにかくフラットでどこにも強調感のないサウンドだといいます。ボーカルは「F7」にも増して生音のごとく温かく、柔らかな心地良さだといいます。特に女声ボーカルの艶っぽさ、しっとり感は「F7」を上回るとしています。

また、とても18Wのパワーとは思えない力強さと立ち上がりの良さも兼ね備えており、特にピアノの滲みの無さは過去に経験のないレベルだとのことです。特に、耳障りになりがちな高域にも硬質感が全くなく、全ての帯域で質感や音色、響きなどに統一感のある、過去に例のない珍しいアンプだとしています。

確かに、本機はたったの18Wとパワーは大きくないため、小型の超低能率スピーカーでは、その真価を十分発揮できないかもしれません。しかし、スペック以上の駆動力が備わっているため、余程の大音量を要求しない限りパワー不足を感じることはないともしています。

しかし、こんな考えをお持ちの方には、本機をお勧めできません…。
  • オーディオは、部品や筐体に物量を投入しないと良い音は出せない。
  • アンプはパワーが重要で、スピーカーをねじ伏せてこそ、良い音が得られる。
  • アンプの部品が少なく、中味が空気だけのアンプで、良い音が出るはずがない。
  • デザインに凝ったアンプこそ、高級機である。
  • 海外製アンプは、なんだか信用できない。
  • 大音量再生こそがオーディオの魅力である。

■ 最後に

ハード指向ではなく、とにかく音楽の奥深さをとことん楽しみたい、超自然なサウンドで、サウンドステージが非常に広く、ナチュラルな響きなど、生の演奏やボーカルが持っている臨場感を自宅で再現したい方にこそ、『 SIT-3 』をお勧めしたいと思います。

重厚長大、超高価格のオーディオ機器に話題が集中しがちな昨今ですが、海外製としては比較的低価格のFirst Watt『 SIT-3 』の存在こそが、米国のオーディオ産業の懐の深さを感じさせてくれます。

ただ惜しむらくは『 SIT-3 』が限定生産(日本国内30台)ということです。 前述のようなサウンドを理想と惚れ込んだ方は、一刻も早い決断をお願いします。
(あさやん)


2019年11月18日 (月)

SPEC 次世代プリメイン『 RSA-M88 』の《 リアルサウンド 》に迫る!!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
本日は、オリジナリティ溢れる、PWM方式Dクラスにアナログ電源を搭載した、SPECの次世代プリメインアンプ『 RSA-M88 』の《 リアルサウンド 》に迫ります。


■ SPEC(スペック)について
本題に入る前に、まずは《 リアルサウンド 》のメーカーである『 SPEC 』の生い立ちとメーカーとしての考え方から…。

SPECは2010年1月6日、元パイオニアの石見 周三氏(元パイオニアマーケティング 取締役営業本部長)によって設立されました。来年(2020年)に創業10周年を迎える若いメーカーです。

石見氏を含め、SPECのメンバーは全員パイオニア出身で、彼らは良い意味でパイオニアのDNAを持っていることが自分たちの強みだとしています。創業当時からパイオニアの音とは違う次元で、自分たちの思うリアルな音を求めて、マニアの世界ではなく音楽を真に楽しめるオーディオを作りたいとの思いがあったといいます。

当初から《 リアルサウンド 》を目指し、それは長く聴いても聴き疲れしない、小さな音でも低域を含めて実在感があり、大きな音でもうるさく感じない、そんな音《 自然界で聴く音 》だったのです。

どうすればリアルなサウンドのアンプを作ることができるのか?

SPECのメンバーが選択したのが、アナログアンプにデジタルのチップを搭載したPWM(パルス幅変調)という増幅方式で、今も同社のアンプの根幹を成しています。

PWM回路によるDクラス増幅とは、入力されたアナログ信号を搬送波に乗せることでパルス化した上で増幅し、最終的にローパスフィルターで搬送波を除去して、通常のアナログ増幅より高効率で大出力を得ることができる増幅方式です。

ただ、PWM方式は効率は良いものの音はイマイチ、というのが当時の常識でした。しかし、同社はPWM方式に賭けたのだといいます。

PWM方式のアンプで最も重要なのは、終段に使うローパスフィルターのコンデンサーであるとの考えから、良質なオイルコンデンサーとマイカコンデンサーを発見し、第一作目の「RSA-F1」に搭載し、発売に至ったのでした。

製品投入当初は、デジタルアンプというだけで拒絶反応を起こすユーザーも多かったそうです。しかし、最近では実際に音を聴いて、その《 リアルサウンド 》の魅力を理解してくれるオーディオ&音楽ファンが増えてきたのだといいます。

同社は、既存の高級ブランドとは違う、国内での立ち位置を目指しているそうです。

SPECは、現在では世界36カ国に取引先があり、特にイタリア・ポーランド・フィンランド・フランス・オランダ・オーストラリアなどが好調だそうで、アメリカ・タイ・台湾・インドネシア・韓国では安定的に動いているとのことです。それほどに、海外では注目されているブランドなのです。

SPECのアンプは、その電源構成によって2系統に分けられます。一つは前述の「RSA-F1」から続く、伝統的なアナログ電源回路を搭載したモデル。もう一つは、現代的なスイッチング電源回路を搭載した「RSA-888」から始まるモデルです。

前者は、アナログらしい味わい深い落ち着いたサウンドであるのに対し、後者は、切れ味の良い若々しいサウンドを狙っているといいます。

また、SPECのアンプの外見上の最大の特長は、筐体にスプルース(米唐檜:ベイトウヒ)という木材を使っていることです。

発熱のあるアンプには、超高級機を除いて木材は余り使われていませんが、そこは発熱のないPWM方式ならではなのです。

スプルースはピアノの響板やバイオリンなどにも使われ、低域を減衰させず、高域の不要共振を減衰させるという独特の性質があるそうです。

SPECではアナログ電源のモデルには底面に使用し、スイッチング電源のモデルは側面に脚部を兼ねる形で使っています。これによってPWM方式ながら、温かみのあるリアルなサウンドを引き出すことができているのです。

同社は言います『 SPECの音は自然な音、決してその軸はぶれません 』と。

スピーカーとスピーカーの間に鎮座して聴くオーディオではなくて、リラックスして自由に聴け、移動しながらでも同じバランスで聴こえるアンプ。それが出来るのはアンプの力が強く、音を制御できるからだともしています。

■ 次世代プリメインアンプ『 RSA-M88 』とは
SPEC『 RSA-M88 』は、DクラスにRコア電源トランスを用いたアナログ電源を搭載し、SPEC独自技術を投入した次世代アンプです。

アンプのパワー段には、使い慣れた米International Rectifier(IR)製デバイスを用いた、ドライブ能力の高いPWMスイッチング方式を採用しています。いわゆる、PWM方式Dクラスにアナログ電源を搭載したアンプです。

3極管真空管アンプの中高域の繊細さに、半導体のウーファーを制御する駆動力の高さを兼ね備えた動特性を実現したとしています。

こちらも定石通り、ベースシャーシにはスプルース(オーストラリア産の積層ソリッド材)を、インシュレーターには今や貴重となった北海道産イタヤカエデを採用しています。これらの材料と構造によって筐体の振動特性をコントロールすることで、楽器のような自然な響きを目指しているとしています。

本機の最大の「肝」ともいえるところが、このクラスの同社製品としては初めて電源部に、音質評価の高いコンデンサー《 響一(ヒビキイチ) 》を採用し、オイルコンデンサーとの相乗効果もあって、余韻の美しさと力強さを両立させたチューニングをしているのです。なお。《 響一 》はニチコンとの共同開発です。

一方、ノイズ対策は各ブロックにシールドを施すとともに、シャーシの内側に同社の上級機同様、ECM(電波吸収塗料)コーティングを施し、有害な外部からの電磁波を吸収することで、中高域の透明度の高い音楽再生を目指しています。ちなみに、ECMはステルス戦闘機の塗装にも使用されています。

そしてもう一つの特長は、《 リアルサウンド 》を提唱するSPECの「ピュア・ダイレクトシステム」です。

これは従来のプリメインアンプでは、ソース信号を音量調節してからパワーアンプに送り込んでいました。これではパワーアンプはゲインが高いため、ソース信号をかなり絞る必要がありました。これではどうしても微小な信号が失われてしまいます。

これに対しSPECのアンプは、パワー段の直前にアナログ電子アッテネーターを置いて、ソース信号を減少させずにパワー段で音量調整しています。この「ピュア・ダイレクトシステム」は、伝送時のレベルが大きい方が微小信号の欠落が少ないという考えに基づたものです。

そして本機のデザインは、セレクタースイッチとボリュームを大型の同形として左右対称の高級感のあるものとなっています。特に、セレクターとボリュームノブの周囲を後ろから淡く光らせており、照明を落とした場合には落ち着きのある電球色で、贅沢な気分にもさせてくれます。

入力はライン専用(XLR×2、RCA×3)で、レベル固定のパワーアンプモードにも設定が可能です。スピーカー端子は1系統のみ、最大出力は120W×2(4Ω)と十分です。本体にはリモコン機能はありませんが、別売の専用リモコン受信機とリモコンユニット(RSR-1)で音量調整が可能になります。

■ さて、サウンドは?
私は、過去に聴いたSPEC製品のサウンドはいずれもクセが少なく、素直で透明度の高いサウンドというイメージを持っていました。

しかし、『 RSA-M88 』は少し違いがありました。厚みのある良質の真空管アンプにも通じる滑らかなサウンドなのです。また、真空管では叶わないS/Nの良さとスピード感を合わせ持っており、音楽を大いに楽しませてくれました。

もちろん従来機同様、ヌケの良い響きの豊かさは健在で、私にはSPECアンプに新たな魅力が加わったと感じました。

特に女声ボーカルの柔らかさ豊潤さは格別でした。サウンド全体の肌触りの良さや豊かな響き、アナログ的で適度な中低域の厚み、しっかりした音像は新しい時代の音を感じさせてくれました。

音源の100%をパワーアンプに入れて、100%のままで聴く。それがSPECのいう『 ピュアダイレクト 』です。「製作者の意図や思いをすべて聴く人に伝える。」それがSPECが、自社を単なるアンプメーカーではなく、《 リアルサウンド 》のメーカーだという所以です。
(あさやん)

2019年11月11日 (月)

MADE IN JAPANへのこだわり『 KRIPTON KX-0.5P 』の魅力とは

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。

日本のオーディオを知り尽くしたレジェンドが送る、メイド・イン・ジャパンへのこだわり。本日は、KRIPTONのブックシェルフ型スピーカー『 KX-0.5P 』の魅力に迫ります。


■ KRIPTONのスピーカー設計者:渡邉 勝氏
2017年10月の発売以来、国産ブックシェルフとしては異例のヒットを続けているKRIPTON「KX-0.5(ポイントファイブ)」に、新たにピアノフィニッシュの『 KX-0.5P 』が加わりました。今回は、仕上げを含め、再チューニングが施された『 KX-0.5P 』に迫ります。

KRIPTONのスピーカー設計者は、言わずと知れた渡邉 勝氏です。このコラムでは何度もご紹介していますが、過去に在籍したビクターを含め、数々の傑作を世に送り出してきた、日本オーディオ界のレジェンド(伝説)ともいえるマイスター(巨匠)です。

渡邉氏の業績のほんの一部をご紹介しますと、ビクターで「SX-3」以降のSXシリーズなど、数々の銘機を開発し、KRIPTONに移籍してからも、その第一作目「KX-3」以来、全てが渡邉氏の手によるものです。

以後「KX-5」「KX-1」、そしてフラッグシップ「KX-1000P」など、マイナーチェンジを重ねてきています。

渡邉氏の作品は、いずれもメイド・イン・ジャパンらしい緻密な感性に支えられた音質と仕上げで、今やスピーカー市場を席巻した感のある海外製スピーカーの中にあっても、一際光る存在であり続けているのです。

私は、日本のスピーカーの歴史を作ってきた立役者こそ、ダイヤトーンの佐伯 多聞氏と、KRIPTONの渡邉 勝氏のお二人だと思います。この二人の存在が、1970年代以降の日本のオーディオ界の発展を牽引したといっても過言ではありません。

■ KRIPTON『 KX-0.5P 』の魅力とは
オリジナルの「KX-0.5」からの変更点は以下の2点です。
1. オリジナルが、スモークユーカリの自然材の突き板に、ポリウレタン仕上げしたものであったのに対し、『 KX-0.5P 』は針葉樹系高密度パーチクルボードとMDF(リアボード)の高剛性密閉型としており、エンクロージャーの6面全てに「高級ピアノ塗装(ポリエステル塗装)」を施しています。この表面硬度の高さにより不要な振動を抑え、上級機「KX-5P」の美しい響きとヌケの良さを踏襲できたとしています。

2. オリジナルが、全ての内部配線材に定評のある「ベルデン製スピーカーケーブル」を採用していたのに対し、その後発売された上級機「KX-3Spirit」で、高域の音質の良さを引き出すべく新たに開発された、マグネシウムケーブル(単線)にPC-Triple Cの撚り線を巻つけたケーブルに変更されています。
そして、オリジナルから踏襲したKRIPTONスピーカーの魅力は次のようなものです。

まずは、これまでのKRIPTONスピーカーの共通した仕様として、
1. 「クルトミューラーコーン」ウーファー
2. 「ピュアシルクソフトドーム」ツィーター
3. 「自然材の突き板鏡面仕上げ」エンクロージャー
4. 「かしめ方式」の高品位デバイディングネットワーク
5. 「天然ウール」吸音材
の5つがあり、そして、
6. KRIPTON高級機には、全てのユニットに希少金属である「アルニコ・マグネット」が採用されています。


しかし、「KX-0.5」『 KX-0.5P 』の前には《 価格の制約 》という壁が立ちはだかりました。

勿論、KRIPTONスピーカーの従来からのアイデンティティでもある「2ウェイ密閉型」は踏襲しながらも、「クルトミューラーコーン」「ピュアシルクソフトドーム」「アルニコ・マグネット」は使うことはできませんでした。

そこでウーファーは、同社としては過去最も小さい140mmCPP(カーボンポリプロピレン:軽くて高剛性)コーンを採用した上で、fo(低域共振周波数)は50Hzを確保しています。ポリプロピレンは元々小口径向きの振動板素材で、それにカーボンを加えることで剛性も確保できたとのです。

マグネットにもさすがにアルニコは使えず、「KX-1」同様フェライトマグネットではあるものの、そこはアルニコの魅力を知り尽くした渡邉氏の執念で、アルニコライクな音色を実現できたとしています。

ボイスコイルは無酸素銅エッジワイズ(角柱)線を4層巻として線積率を上げ、駆動力を重視して、高能率でトランジェントの良い低域を実現しています。このウーファーユニットにより小型スピーカーシステムとは思えないダイナミックな低音と、アルニコ的な特性を持たせた磁気回路を採用することで、極めて歪みの少ない、ボケのないクリアな低音を実現できたのです。

また、KRIPTONはハイレゾブームの火付け役でもあり、ツィーターの高域伸張には並々ならぬチャレンジ精神を感じます。「KX-0.5」『 KX-0.5P 』のツィーターは、35mmピュアシルク・リングダイヤフラム型に砲弾型のイコライザーを付けたタイプを採用。ハイレゾ音源に十分対応できる50kHzまでの超高域再生と、シルク振動板による透明度が高く、音楽性豊かなサウンドを両立させています。

そして、エンクロージャーの内部で本機のパフォーマンスを支えているのが、高品位で低損失なデバイディングネットワークです。歪みを抑えるため、直径1.2mmの低抵抗コイルによる空芯コイル、ケースに封入しピッチ材で振動を抑えた低損失メタライズドフィルムコンデンサーなどの高音質素子を採用しています。

ウーファーとツィーターのインピーダンスを合わせた「インピーダンスマッチング型」デバイディングネットワークには、音質を重視し厳選した部品を使用、素子間の結線はハンダフリーのお馴染み「かしめ方式」としています。これらの素子は、度重なる試聴を繰り返した上で決定され、優れたスピーカーユニットの音を極限まで引き出しているのです。

そして、密閉型エンクロージャーの内部には「天然ウール吸音材」を使用して低域を制動し、理論通り《 ピュアな奥深い低音 》が実現できたのです。KRIPTONは、密閉型の吸音材にはウールの低密度フェルトを使い、制動特性を調整し、トランジェントの良い豊かで伸びやかな低音再生を目指しています。

■ さて、『 KX-0.5P 』の音質は
私の「KX-0.5」試聴記 には『 コンパクトな高級機 』とも言えるとして、
  • 全帯域にわたって音離れが良く、ヌケが抜群に良い
  • 大きさから想像するより、遙かにスケールが大きい
  • 立ち上がりが良く、弾むようなサウンドで、鳴りっぷりが非常に良い
  • ボーカルが実物大で、口元が非常に小さい
  • 低域に詰まった所が全くなく、高域には想像以上の伸びがある
  • 弦楽器が非常に艶やかで、「渡邉ビューティー」を感じる・・などなど
と絶賛したのですが、この評価がどうなるか興味津々で『 KX-0.5P 』を試聴しました。

『 KX-0.5P 』の解像度は明らかにオリジナルを上回っており、高域がさらにクリアでヌケが良くなったお陰で、全帯域のバランスが良くなり、高域が伸びて(f特的には同じ)聴こえました。これはツィーターの内部配線ケーブルによる改善(余計な音を出さない)の効果だと確信しました。

更にピアノフィニッシュとすることで実現した、艶やかさや清涼感は日本人の感性にもピッタリだと感じました。

完成度が一段と高まった『 KX-0.5P 』ですが、オリジナル同様、日本のオーディオ界のレジェンド渡邉氏の『 長いキャリアによる職人技の成果 』だと、改めて納得させられました。

私の本音は、海外製一辺倒ではなく、『 今こそ国産スピーカーを見直す時期にきているのでは... 』との思いです。

※新製品『 KX-5PX 』(10月下旬発売)が発表されました。後日、取り上げる予定です。
(あさやん)

2019年10月14日 (月)

遂に発売日決定! YAMAHAレコードプレーヤー『 GT-5000 』予約受付開始!!

ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
YAMAHAのフラッグシップである《5000シリーズ》のレコードプレーヤー『 GT-5000 』。発売が遅れに遅れて、発表(2017年9月)から実に丸2年。遂に発売日が決定し、予約の受け付けが始まりました。それでは『 GT-5000 』を詳しく見てまいりましょう。

■  "GT" を冠するプレーヤー

YAMAHAの "GT" を冠したプレーヤーは、1982年発売の「GT-2000」を皮切りに、83年の「GT-1000」、85年「GT-750」と限定生産の「GT-2000X」と続きました。因みに1982年はCDの登場年でもあり、当時はオーディオが最高に盛り上がった時代でした。

この "GT" シリーズは、マニア心を大いにくすぐる曖昧さのないリジッドな作り、大型ターンテーブル、本格的トーンアームなど信頼性の高いプレーヤーで、いずれも大ヒットしました。しかしCDが本格的に普及していく中で、1991年の限定生産品を最後に次第に店頭から姿を消していったのでした。

そして近年のアナログブームに呼応する形で、《5000シリーズ》に相応しい内容のプレーヤーの開発が始まったのです。しかしそこには予想以上に多くの困難を克服する必要があり、結局当初の発売予定から2年近くもかかってしまったのでした。それ程に構成部品の調達には困難を極め、本機のための新たな設計箇所が大幅に増えてしまったようです。


■ 『 GT-5000 』のデザイン・仕様

『 GT-5000 』の外観は、往時の「GT-2000」を彷彿とさせる、懐かしさと信頼性が同居した実に完成度の高いデザインです。サイズは「GT-2000」などとほぼ同じで、546W×223H×411Dmmで最近のプレーヤーとしては超大型です。寸法は勿論、重さ・素材(パーティクルボード)とも「GT-2000」とほぼ同じなのは、その寸法や重量配分、素材が音質的に最善であるとの考え方から、少しも変える必要がなかったからだとしています。

『 GT-5000 』が踏襲した《GT思想》は、音の本質をオーソドックスかつシンプルに、基本に忠実に追求する「GT-2000」で初めて提唱したYAMAHA伝統の設計コンセプトです。Gigantic&Tremendous(=途方もなく巨大な)の言葉が示す通り、音質的に必要な部分の巨大重量化と不必要な部分の大胆な省略を設計の基本に置いています。

「GT-2000」などのモデルが、いずれも当時主流だったダイレクトドライブ(DD)でしたが、本機では近年高級機や海外製品では常識でもある、滑らかな回転を狙ったベルトドライブを採用しています。モーターにはサーボを持たない24極2相ACシンクロナスモーターを搭載し、交流電源にはクォーツで生成された正確な正弦波を用いています。

ダイレクトドライブはスペックこそ優れていますが、ターンテーブル直下にモーターを置くため、どうしても振動を拾いやすく、正確な回転のためにはサーボ回路が不可欠なことから、コギング現象(僅かな回転ムラ)はどうしても避けられません。一方、ベルトドライブではモーターの回転をベルトを介して伝えるため、振動を吸収でき、コギングのない滑らかな回転が得られ、またサーボ電流による音質への影響も回避できます。

ターンテーブルは過去の製品と違い、ベルトドライブのため二重構造をとっており、ベルトを掛けるインナーターンテーブルは直径:143mmの真鍮製で2.0kg、メインのターンテーブルは直径:350mmアルミ製で5.2kgあります。異種金属の組み合わせで固有振動を回避しているようです。外縁部を肉厚にした結果、慣性モーメントは実に0.92t・cm²にも達しています。また、ターンテーブルシートはフェルトとシリコンゴムの2種類が付属しています。

そして『 GT-5000 』のコンセプトで、私が最も注目したのは以下の2点です。


■ 注目点その1:シンプル&ストレートを極めた《ピュアストレート・トーンアーム》

かつてオーディオ評論家の故 江川三郎氏が考案し、2016年FIDELIXが「0 SideForce」として蘇らせた、独自設計の「ピュアストレート・トーンアーム」を搭載しています。

オフセット角を持たさずカートリッジから支点まで一直線に配置されています。これはオフセット角によるトラッキングエラーの発生より、超ショートアームにすることでの優れた重量的・力学的バランスにより、インサイドフォースキャンセラーのないシンプルな構造にしたことのメリットの方を重視した結果といいます。ヘッドシェルは交換可能で汎用性が高まっています。

アームパイプはテーパーがかかった銅メッキアルミの表面を、銀メッキカーボンファイバーで覆った2重構造で、高剛性・低共振とノイズシールド効果を両立させています。微小信号を扱う内部配線には、定評のあるPC-Triple Cを使うことで情報量の多さを狙っています。


■ 注目点その2:特許機器「Wind Bell」社との共同開発《三次元バネ構造のインシュレーター》

Joshin webショップでも大好評のWind Bellの「スプリングコイル+特殊制振材+3次元特殊支持構造」によるフローティング方式のインシュレーターを採用しています。これにより低音域の有害振動はカットして、高音域の有益な振動をより効果的に活かすという、オーディオ機器、特にプレーヤーにとっての理想的なインシュレーターです。

また搭載質量には関係なく、低い水平方向の共振周波数(7Hz以下)を持ち、一定に保つことが可能だとしています。これにより、プレーヤーのモーターが水平方向の加振源となる振動によって、置き台や床面の振動が引き起こされることがなければ混変調歪が発生せず、有害振動の防止と音質向上に効果的だとしています。

その他の主な特長は、後部の音声出力端子に、通常のRCA音声端子に加えてフォノカートリッジ出力をバランス音声のまま取り出せるXLRバランス出力端子を装備しています。これにより同社のプリアンプ「C-5000」、パワーアンプ「M-5000」と組み合わせることで、カートリッジ ⇒ スピーカー出力間の完全バランス伝送が可能となります。

また、後部の専用端子に接続して使用するストロボライトとストロボスコープが付属しています。大径ターンテーブルに食い込む形で配置された円柱状の突起は、ディスクに針を下ろす際に掌がプラッター外周に触れることを防ぐフィンガーレストで、ここには±1.5%の範囲で回転数を微調整できるピッチコントロールノブもビルトインされています。

そしてキャビネットは、YAMAHA伝統の樺天然木黒色塗装仕上げを採用したブラック(B)と、YAMAHAならではのグランドピアノと同等の黒鏡面ピアノフィニッシュを採用したピアノブラック(BP)が用意されています。


■ 完全バランス伝送で試聴しました

音質は『 GT-5000 』→「C-5000」→「M-5000」→「NS-5000」の完全バランス伝送で確認しました。



クラシックではその圧倒的なリアル感、吹っ切れ感、そしてS/Nの良さから来るクリアネスと情報量の多さ、質感の豊かさに感動しました。ホールの隅々まで見通せる様な澄み切った空気感は、デジタル・アナログを問わず過去に経験のないレベルのものでした。

ジャズサウンドでは、録音スタジオに飛び込んだ様な生々しさ、ストレートに突き抜ける伸びやかさに感動しました。ミュージシャンの立ち位置が正確に表現され、グルーブ感もひしひしと伝わって来たのです。非常にフレッシュで音の立ち上がりがリアルでした。

そしてボーカルに至っては、中央にすっくと立ち、感情豊かに歌う様が目に見えるようでした。女声ボーカルは優しく滑らかに、男声ボーカルは厚みのある豊かな声が響きました。そのリアル感、吹っ切れ感、そして空気感に感動以上の、ある種恐ろしささえ感じました。

これは過去のアナログとは異質、ある意味、最上のデジタルを超越した《超アナログ》の世界です。回顧趣味とは別次元の《超アナログ》を『 GT-5000 』で実現できます。

(あさやん)


2019年10月11日 (金)

ESOTERIC 一体型SACD/CDプレーヤー『 Grandioso K1X 』の究極度とは?

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
本日は、究極のトランスポート「VRDS-ATLAS」を搭載した、ESOTERICの一体型SACD/CDプレーヤー『 Grandioso K1X 』の究極度に迫ります!!


■ Grandiosoとは
今やハイエンドオーディオの世界では、日本を、いや世界を代表するブランドの一角を占めるESOTERIC。中でもGrandioso(グランディオーソ)は、同社の最高峰機器に付ける称号で、同社がもつ究極のテクノロジーやノウハウを投入して、2013年(平成25年)の10月にデビューしたのです。

「すべての英知が結実し、新たなる頂きへ。グランディオーソと言う名の新たなるフラッグシップ登場。」という決意の基、せかず慌てず、あくまでマイペースで、納得いくまで製品を練りに練って、年に1アイテム程度のペースで投入されてきました。

最初の作品は、SACD/CDトランスポート「Grandioso P1」、モノラルDAC「Grandioso D1」、そしてモノラルパワーの「Grandioso M1」でした。続いて、翌年2014年にプリアンプ「Grandioso C1」、2015年のステレオパワーアンプ「Grandioso S1」、2016年のクロックジェネレーター「Grandioso G1」、同年10月にはGrandioso初の一体型SACD/CDプレーヤー「Grandioso K1」、インテグレーテッドアンプ「Grandioso F1」と続きました。

そして今年(2019年)の3月、衝撃をもって迎えられ、まだ記憶に新しいSACD/CDトランスポート「Grandioso P1X」、モノラルDAC「Grandioso D1X」として大きく飛躍を遂げ、世界最高峰のセパレートプレーヤーとして登場したのでした。価格も、誰もが驚いた1000万円を越す、超々弩級でした。

半年前に登場したこの4筐体のセパレートSACD/CDプレーヤー「Grandioso P1X/D1X」に搭載された、ESOTERICの独自技術であるドライブメカ「VRDS-ATLAS」と、ディスクリートDAC「Master Sound DAC」を1つの筐体に組み込み、一体型SACD/CDプレーヤーの究極を目指して完成させたのが、今回ご紹介します『 Grandioso K1X 』なのです。

このように、わずか半年で一体型『 Grandioso K1X 』を完成させたのは、おそらく同時進行で開発を進めていたからだと推測されます。それでは、その『 Grandioso K1X 』の《 究・極・度 》を、前作「Grandioso K1」と比較しながら見てまいりましょう。(以下、Grandioso省略)

■ ドライブメカ「VRDS-ATLAS」


前作「K1」のVRDS-NEOから変更された「VRDS-ATLAS」は、先行発売されたSACD/CDトランスポート「P1X」で初めて採用されたメカで、ESOTERICとしては16年ぶりに新設計したVRDSメカです。

VRDSは、ディスクを同径のターンテーブルに確実にクランプして回転させ、ディスク自身の回転振動やメカニズムの不要振動を徹底して排除し、ディスクの反りも矯正します。これらにより、光ピックアップ精度を大幅に向上させ、サーボ電流を極小化することで、読み取りエラーの大幅な減少により優れた音質を実現しています。

「VRDS-ATLAS」ではさらに、NEOに比べ27%の重量増(メカ部 6.6kg、ベース部含め 13.5kg)とし、VRDS史上最高の剛性と重量で、音質に影響を及ぼすあらゆる振動を減衰したのです。SS400スティール製の大型筐体、ジュラルミン製ターンテーブル、新設計のスティールボールによる点接触のスラスト軸受けを採用するなど摩擦や回転ノイズを極限まで抑える設計で、これは「P1X」とほぼ同等とのことです。

また、VRDS史上最も静かなメカを実現できたのは、メカニズム全体を低重心化し、ターンテーブル駆動用モーターも従来のブリッジ最上部からターンテーブルの下側に移動したことです。さらに、トレーのくり抜きを最小限したり、振動吸収エラストマー樹脂製ストッパーでトレー収納時の共振を防止するなど徹底した結果です。

■ ディスクリートDAC「Master Sound Discrete DAC」


DACデバイスは前作で採用した旭化成エレクトロニクス社のAK4497ではなく、完全自社設計のDACで、先行の「D1X」と同一構成でディスクリートで組み上げられています。さすがに、4筐体の「P1X/D1X」と同じ規模の回路は物理的に不可能なことから、コンデンサーなど一部のパーツを変更し、パーツの配列を「D1X」の放射状から横一列に変更されています。

クロックドライバーやロジック回路、コンデンサー等々、チャンネルあたり32エレメントでの構成は継承するとともに、マルチビットDACで最も重要で音質を左右する抵抗素子は「D1X」と同一部品を採用したとしています。そして、デジタル基板を挟んで左右対称配置とすることで、信号経路を最短化しています。

さらに、独自開発の64bit/512Fs対応のΔΣモジュレーターを搭載し、DSD:22.5MHzやPCM:768kHzの再生にも対応しているのです。DSDもPCMも最適に再生するために、ディスクリートDAC専用のデジタル処理のアルゴリズムには、これも独自に設計したFPGA(電子制御機能を変更できる半導体)を使っているとしています。そのDAC基板は病院のオペ室と同レベルのクリーンルームで製造されているそうです。

■ その他の仕様
D/Aコンバーターは左右チャンネルで電源トランスを独立させ、合計で4つの独立トロイダル電源トランスを搭載。電源レギュレーターはディスクリート構成の「ローフィードバックDCレギュレーター」を採用して強化されています。また、通常のオーディオ用電解コンデンサーに比べて、驚異的な大容量のスーパーキャパシター「EDLC」を、合計76本(2,050,000μF=2.05F)も搭載しています。メカの低重心化やディスクリートDACとの相乗効果で、さらに瞬発力やエネルギー感の向上が図れたとしています。

出力は、アナログはRCAとXLRが各1系統、デジタルはRCAとXLRが各1系統装備されています。デジタル入力は、RCA同軸、光TOS、USB-Bが各1系統装備されています。クロックは前作から改良されていますが、ESOTERIC製品では常識の10MHzの外部クロック入力(BNC)も装備されています。

そして、今後必須になるであろう「MQA」にも対応しており、USBでのフルデコードは勿論、「MQA-CD」にも対応しています(後日アップデート予定)。また、将来的に想定している、さらなるグレードアップのための外部電源用の専用端子がリアパネル下部に2個装備されています。

■ 前作との音の違いをESOTERICの担当者にお聞きしました。
最も大きな違いは、全域にわたる解像度と密度感の向上で、特に低域の伸びと厚みは圧巻だといいます。それには、「VRDS-ATLAS」の搭載と低重心化による振動対策が大きく貢献しているようです。さらに、DACのディスクリート化が鮮度の高さや粒立ちの良さ、エネルギー感の向上にも繋がっているとしています。

そして、ここぞという所での瞬発力も明らかに向上しているといいます。これには電源部の強化が寄与しており、前述の外部電源の追加でどうなるのか今から楽しみだともいいます。また、余韻の再現性や開放的な低音は、ただ筐体を強化しただけではなく、「P1X/D1X」同様、トップパネルをネジで締め付けないセミフローティング構造としていることに起因しているのだともしています。

■ 最後に
ESOTERIC『 Grandioso K1X 』は、「Grandioso P1X/D1X」のコンセプトをそのままに、一体型として完成させたフラッグシップSACD/CDプレーヤーで、その内容を知れば知るほど、まさしく【 究極のデジタルプレーヤー 】だと納得させられました。
(あさやん)

2019年10月 7日 (月)

DENON次世代フラッグシップ『 SX1 LIMITED EDITION 』 満を持して登場!!

ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
DENONのフラッグシップ、プリメインアンプ「PMA-SX1」とCD/SACDプレーヤー「DCD-SX1」が、5年ぶりにモデルチェンジします。いずれも型番に "Limited" を冠し、『 PMA-SX1 LIMITED 』『 DCD-SX1 LIMITED 』となり、満を持しての登場です。しかし、その開発の道のりは長く大変なもので、単なるマイナーチェンジとは明らかに一線を画するものです。


■ 4年もの歳月をかけてじっくりと開発された『 SX1 LIMITED EDITION 』

その原器といえる「Model X」の開発を始めたのが4年前だといいます。これは通常の数倍にもなる開発期間で、しかも「Model X」の更に原器である「PMA-SX1」「DCD-SX1」がすでに存在したにも関わらずです。

そもそも「Model X」は発売の予定がなく、同社の音の基準となるリファレンスアンプとして開発していたのですが、そのあまりの音の良さから「発売すべき」との声が社内から挙がったのだそうです。

通常の製品開発手法では、まず開発期間を設け、仕様やパーツコストなどを、競合他社を含めて、クラスで最良となるよう工夫しながら開発していきます。しかし、今回の "Limited" は違いました。開発期間やパーツコストの制限を設けず、同社技術者の経験、技術、そして感性を注いでじっくり開発したのです。現に、前作から部品交換した箇所は、いずれも400箇所以上に上るのだといいます。

その400箇所も、部品を再吟味しただけでなく、必要な部品は新たに作り直したり、コンデンサーや抵抗などは、それぞれの音色は勿論、その組み合わせによる変化も吟味しつつカット&トライを繰り返したといいます。通常製品のように、ある段階での妥協は一切しなかったのだといいます。それが常識はずれの開発期間、4年もの歳月となったのです。

更に電気回路の見直しだけに留まらず、機構面は勿論、インシュレーターなどにもわたったのです。インシュレーターやトップパネルには両機とも、超々ジュラルミン "A7075" が採用されました。音の粒立ちや高域の見通し、スケール感の向上に貢献したとしています。
※A7075は、アルミに亜鉛とマグネシウムが添加された合金で、非常に硬度が高く、高級自転車のフレームや航空機のボディに使われています。

それでは『 SX1 LIMITED EDITION 』の2機種を詳しく見てまいりましょう。


■ プリメインアンプ『 PMA-SX1 LIMITED 』

前作の、もともとシンプルだった外観から、パネルのレタリングを少なくし、更にあっさりしたデザインとなっています。入力はアナログのみで、RCA:5系統、XLR:1系統(3番HOT/2番HOT切替)に加え、MM、MCのフォノ入力が1系統ずつ装備されています。更にホームシアターとのフロントSPの共用に便利な、EXT.PRE:1系統や、RCA出力:1系統を備えています。



内部中央下のプリアンプ部は、全ての主要なコンデンサーと、基板自体も前作から変更したといいます。中央上のパワーアンプ部は約80%のコンデンサーを、左奥のボリュームなどの制御基板は約50%、右奥の入力回路やフォノ回路部は約90%の主要なコンデンサーを変更したのだといいます。その数は実に37種に及ぶそうです。

それらのコンデンサーはその殆どがカスタムコンデンサーで、用いる素材の指定、スリーブの素材やその有無、加熱工程の温度指定、プレス工程の圧力などに、様々な経験とノウハウが注入されているといいます。このようにコンデンサーにこだわるのは、電解コンデンサーによって、空気感や色彩感の再現性に違いがあることを重視した結果だそうです。

また前作では動作の安定性を確保するため、保険的なニュアンスで使われていたパーツを、あえて音質には良くないとの考えで削減。更には音質向上のためとして使われていたものも、必要性を再吟味した上で10箇所ものパーツを削減したのだそうです。

回路的には前作から大きな変更はないとしています。それは裏を返せば、前作の完成度の高さだともいえます。全段バランス構成で、BTL接続することで高いスピーカードライブ力を得ています。この結果ドライブ電流がグラウンド回路に流れ込まず電位が安定するため、ノイズや回路間の干渉も低減され、正確に増幅されるのです。

そしてDENONアンプの最大のアドバンテージでもある "UHC-MOS" FETによるシングルプッシュプルのシンプルな構成も勿論継承しています。通常パワーアンプでは、多数の素子を並列駆動することで大出力を得ようとしていますが、DENONは「POA-S1(1996年)」の開発以来、1ペアの "UHC-MOS" という最小限の増幅素子とすることで「繊細さと力強さ」を両立できたのです。

勿論、名器「DL-103」を擁するDENONだけに、フォノイコライザーにも手抜かりはありません。MC/MMそれぞれ専用の入力端子を備え、「DL-103」などの中~高インピーダンスと、オルトフォンを代表とする2~10Ωの低インピーダンスのMCカートリッジに切替えで対応したMCヘッドアンプに、これも同社の「PRA-2000(1979年)」以来伝統のCR型イコライザーを搭載しています。イコライザー回路はPHONO入力時のみ電源が入る仕様です。


■ CD/SACDプレーヤー『 DCD-SX1 LIMITED 』

本機もアンプ同様、シンプルなデザインを追求。アナログ出力はRCAとXLRが各1系統。デジタル出力はRCA同軸とTOS光各1系統。デジタル入力はRCA同軸とTOS光各1系統。USB入力はUSB-BとUSB-Aが各1系統装備されています。



アンプの『 PMA-SX1 LIMITED 』同様、本機も4年もの開発期間を要しており、パーツを一から吟味し直し、カット&トライを繰り返し、結局変更したパーツ400超、37種のカスタムコンデンサーの大量投入に至ったのです。妥協を許さないその姿勢には感服します。

デジタル回路は、突き詰めれば突き詰める程、ドライブメカの機械振動により敏感になってしまう傾向があります。結果、独自設計の高精度メカ自体をよりリジットにしての低重心化や、メカを支えるアルミ砂型鋳造ベースにより振動を劇的に遮断できたことから、安定した読み取りが得られ、ピックアップ・サーボへの負担やエラー訂正などのデジタル回路への負荷が軽減できたのです。

DACチップは前作同様バーブラウンの32bit型 "PCM-1795" 。信号処理についても前作を継承して、 "アドバンスドAL32プロセッシング" により、本来のアナログ波形を理想的な補間処理で再現。更にD/Aコンバーターの直近にクロックモジュールを配置する "HDマスター・クロック・デザイン" を採用してD/A変換の精度を高めています。また最新の超低位相ノイズの水晶発振器を採用したことで、ジッターを10dBも低減できたとしています。

D/AコンバーターはL/R専用でフルバランス構成。信号ラインが最短になるミニマム・シグナル・パス。デジ/アナ専用アルミ砂型鋳物ベースの電源トランス。アンプでも採用している振動抑止構造 "ダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクション" を本機も採用。電源トランスはもとよりディスク回転に伴う内部振動、スピーカーの音圧による外部からの振動にも対処。振動を効果的にグラウンドへ逃がす構造をとっています。

CDプレーヤーにとって今や必須となったUSB-DACも装備。DSDは5.6Mz、PCMは192kHz/24bitと、あえて欲張った設計は採らず、PCM入力時は "Advanced AL32 Processing" によりハイビット&ハイサンプリング化されます。

勿論クロックも、本機のクロックを使用するアシンクロナス転送としています。USB-BにはPCからの高周波ノイズをカットする高速デジタルアイソレーターを搭載しており、リアパネルにはUSBメモリ用のUSB-Aも装備してます。


■ 最後に

アンプ・プレーヤーともに外観には殆ど変化はないのですが、ここまで使用パーツを変更したことで、全く別モノといえる程の製品になっています。

裏を返せば前作でも十分完成度は高かったといえるのですが、そこに更に、新たに得られた技術的なノウハウを注入し、コンデンサーを中心に高性能・高音質パーツを大量投入することで、ここに単なるマイナーチェンジではない、全く新しい "LIMITED" が完成したのです。

そして何といっても "LIMITED" の魅力は、安心&安全の福島県白河の自社工場で、1台1台、心を込めて生産されているということです。
(あさやん)


~ 以下は、8月にD&M川崎本社で行われた新製品発表会に出席した弊社スタッフによる感想です ~

『 PMA-SX1 LIMITED 』
一聴して感じた事は、 "鮮度の高い表現" です。DENONらしい、低域の量感豊かで懐の深いサウンドを楽しめました。音の鈍さは全く無く、生楽器を聴くような "張り" を感じさせるスピード感と、余韻が滑らかに消えていく、音離れの良さを両立していました。

『 DCD-SX1 LIMITED 』
一聴して感じるのが "明瞭度とスケール感の向上" でした。音の粒立ちが良く、繊細でありつつも一音毎の表現は力強い。DENONらしい量感豊かな低域表現に、音の明瞭度が加算される事で、全体的なスケール感の向上に繋がっていました。特に音の奥行き感の向上は素晴らしく、演奏されているホールが変ったかのような広がりを見せました。

両モデルとも "NEシリーズ" を設計されたDENONサウンドマネージャー:山内氏の音作りらしい「Vivid & Spacious」 "生々しい演奏と空間模写" が表れています。

また、山内氏の目指す "いつまでも聴いていたい、音楽に没頭できるオーディオ" という、実に音楽的で、良い意味で国産離れした活き活きとしたサウンドをお楽しみいただけるでしょう。  (とうふ)


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