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2015年9月

2015年9月28日 (月)

それでも夜は明ける (2013)

それでも夜は明ける 19世紀のニューヨーク。バイオリニストで自由黒人のソロモン(キウェテル・イジョフォー)は家族と幸せに暮らしていたが、巡業先で興行主(スクート・マクネイリー、タラン・キルラム)に騙されて南部の奴隷市場に売り飛ばされる。彼が買われたのは南部の農場主フォード(ベネディクト・カンバーバッチ)のところで、自分は自由黒人だという主張も支配人のエドウィン(マイケル・ファスベンダー)に揉み潰されて強制労働と虐待の日々を送るのだったが…

 久しぶりに見た黒人差別告発作品。しかもアカデミー作品賞受賞作である。しかし冒頭部はそんな映画に見えない。自由黒人という、北部に少数いた文字通り自由な黒人が主人公。ああ、この時代に自由と家と家族を持って黒人が暮らしている、時代も変わったな(?)なんて気分で映画を見ていたら突然奈落の底に落とされる。私ぐらいの歳の人にしては、「マンディンゴ」か「ルーツ」の世界にである。

 マイケル・ファスベンダーによる地獄の農園。目をおおうような拷問を、何事もなかったかのように見ているエッブス夫人(サラ・ポールソン)が怖い。そして印象に残るのが、逆境に生きる女性パッツィ(ルピタ・ニョンゴ)。奴隷の中に咲いた一輪の花のよう。彼女がどうなったんだろうかというのが、この映画の唯一の心残りである。

 それにしても、いいところをかっさらっていったのがカナダ人大工を演じたブラッド・ピット。正に役得というか、いいところをすっぽーんとかっさらっていく。ちょっとやりすぎかなと思いつつも、嫌みにならないのはブラピの持ち味なんだろうなと思わせられる。

12 YEARS A SLAVE
スティーヴ・マックィーン監督。2013年アメリカ映画。

2015年9月22日 (火)

ブルー・ジャスミン (2013)

ブルー・ジャスミン ニューヨークに住むジャスミン(ケイト・ブランシェット)は投資家の夫ハル(アレック・ボールドウィン)と暮らすいわゆるお金持ちのセレブ。しかし夫は逮捕され刑務所で自殺。自身は破産。行き場を失ったジャスミンはサンフランシスコへ引っ越してそりの合わない妹ジンジャー(サリー・ホーキンス)の元にお世話になることになったが、元々育った環境が違う上に、何事もジャスミンのプライドが邪魔をして…

 ウディ・アレン監督が久々にアメリカで撮ったドラマ。ニューヨーク(過去)とサンフランシスコ(現在)の行き来が印象的に使われていて、危うい均衡の上に成り立っていたセレブ生活がガラガラと音を立てて崩れ去っていった(その様子も描かれる)ジャスミンとその後が交互に描かれる。非常に面白い、見応えのある映画である。

 個人的にケイト・ブランシェットびいきなので何とも痛々しい映画なのだが、彼女って本当にこういう、いけすかない嫌な女の役でもうまい。彼女は自分のセレブ生活は他人の不幸の上に成り立っていたってもをうすうす感づいていたんだろうけど、それを一時の激情でぶちこわしてしまうあたりに何かヘンな共感を覚えてしまった。わからないのは、サンフランシスコパートでの彼女の嘘。いくらプライドが邪魔しても、ばれる嘘をなぜつく? 彼女はこれでオスカー獲得。アレック・ボールドウィンもいつになくはまり役だったし。

 意外な拾いものだったのが妹のサリー・ホーキンス。不幸に生きる小市民ってふうに見えて、実は彼女は誠実に生きていてけっこう幸せなんじゃないかなぁなんて勝手に思ってしまった。

BLUE JASMINE
ウディ・アレン監督。2013年アメリカ映画。

2015年9月19日 (土)

寒い国から帰ったスパイ (1965)

 イギリスの諜報部員アレック・リーマス(リチャード・バートン)は、ベルリンで諜報活動を行っていたが東ドイツへ送り込んでいたリーメックが射殺されたことにより、イギリスへ呼び戻される。解雇されたリーマスは図書館員の職を得るが、そこで知り合った共産党員の女性ナン(クレア・ブルーム)と愛し合うようになる。やがて、新しい作戦でリーマスは東ドイツへ潜入、元ナチの工作員ムント(ピーター・ヴァン・アイク)を葬る任務を得るのだったが…

 ジョン・ル・カレの有名なスパイ小説の映画化。モノクロでクラシックな雰囲気で、60年代の冷戦時代をぐいぐいと描いたリアリティあふれる習作である。よく、スパイは地味な仕事でジェームズ・ボンドみたいなヤツはいないと言われるけど、このアレックのような男なら実際にいたんじゃないかと思わせてくれる。

 しかしこの映画、惜しいのはとんでもなくストーリー運びが良くなく、一旦解雇されたアレックが再びスパイとして働きだすあたりのストーリーがよくわからないのだ。リズとの関係も嘘っぽいので、ラストの結末にかんしては「あれ?」っていう感想が隠せなかった。こういうのって、やっぱり原作読まないとわかんないものなのかな。特にこの時代に映画化されたものは。

THE SPY WHO CAME IN FROM THE COLD
マーティン・リット監督。1965年アメリカ映画。

2015年9月16日 (水)

まごころを君に(アルジャーノンに花束を) (1968)

 チャーリー(クリフ・ロバートソン)は知的障害を持つ青年。パン工場に勤めているが同僚にもからかわれる始末。そんな彼の友達は実験動物として飼われているネズミのアルジャーノン。彼の相談役であるアリス(クレア・ブルーム)は、ある日彼に天才になる手術を受けることをすすめるのだったが。

 ダニエル・キイスの有名な原作の映画化作品。日本でも最近テレビドラマ化されているらしいが、こちらは未見である。天才になる手術を受けた青年。彼の一歩先を行く、天才ねずみのアルジャーノンとその顛末を描いた名作である。あんまり意識しなかったんだけど、私が経年変化というか何事も10年後20年後を気にするようになったのは、この映画が根っこにあるんじゃないかと再見して思い当たった。

 クラシック映画らしくあって、まわりの友人のからかいがステレオタイプだったり、主人公とアリスの関係が妙にぎくしゃくしてるあたりが気になったが、現代の視線で見ても十分鑑賞に値する物語である。

CHARLY
ラルフ・ネルソン監督。1968年アメリカ映画。

2015年9月11日 (金)

オーバードライヴ (2013)

オーバードライヴ 18歳のジェイソン(ラフィ・ガヴロン)は、興味本位で友人から送られて来た覚醒剤の包みを受け取る。しかしこれはおとり捜査で、逮捕されたジェイソンは誰かを密告しないと10年以上の禁固刑になるという。別れた妻から事件の連絡を受けたトラック会社運営のジョン(ドゥエイン・ジョンソン)は、何とか息子の罪を軽くしようと連邦検事のキーガン(スーザン・サランドン)にたのみこむ。一度は断ったキーガンだったが、麻薬組織の大物の逮捕と引き替えに息子の刑が軽くなると言い…

 麻薬とおとり捜査がテーマの不思議なアクション映画。前半は社会派的内容で、知人の麻薬常習犯や売人をたれこんだら罪が軽くなると言う、おかしな司法取引を告発。そして後半は、息子を助けるためならとひと肌脱いだ親父が思わずちびりそうになるような大物麻薬組織のボスとやり合うというアクション編である。ただの運送会社社長がなぜこんなに強い?と思うんだけど、そこはザ・ロックが主演のお約束でしょう。

 それにしても、たれこめば罪が軽くなるって本当にヘンな制度です。アメリカへ行く時は、はめられないように注意しなければならないってのは、お約束ですね。

SNITCH
リック・ローマン・ウォー監督。2013年アメリカ映画。

2015年9月 4日 (金)

猿の惑星 新世紀(ライジング) (2014)

猿の惑星 ライジング 前作から10年、しゃべる猿人であるシーザー(アンディ・サーキス)はコバ(トビー・ケベル)、ブルーアイズ(ニック・サーストン)らの群れを従えてサンフランシスコの山奥で暮らしていた。ところが、死滅したと思っていた人間に遭遇。電力が枯渇した人間は、猿のテリトリーにある古い水力発電ダムの復活を目論んでいた。一触即発の危機を前に、マルコム(ジェイソン・クラーク)は市長ドレイファス(ゲイリー・オールドマン)と相談の上、猿たちの説得に当たるのだったが…

 新生「猿の惑星」シリーズの第2作。いや「PLANET OF THE APES」を加えると第3作になるんだけど、これをカウントするかどうかは難しいところです。

 しかしこれ、前半は近年まれに見る傑作だと思う。なぜ戦争は起こるのか?という単純な問いに、猿と人間を当てはめて実に明快に答えている。武器を使わない解決、話し合いに関する理解もしっかり描き込まれている。ここまでだけだと、かつて「バタリアン」というB級スプラッタ映画に、実は核廃棄物の恐怖がじっくりと描き込まれているのを知った時と同じ驚きを感じた。しかし事態はそんなに単純ではなく、中盤では猿たちの仲間割れによる均衡の破壊が、そして後半は極めてアメリカ的な解決にたどりつく。何なんだろう、この映画は。シーザーが最後にコバに向かって発する言葉に、ちょっぴりがっかりしたのは私だけではないのでは? これでは再び憎しみの連鎖が起こる。

 辛口に書いたけど、これは単純なアクションどっかん映画でないことだけは確かなようだ。今後の展開に期待したいところだ。

DAWN OF THE PLANET OF THE APES
マット・リーヴス監督。2014年アメリカ映画。

2015年9月 2日 (水)

アメリカン・ハッスル (2013)

アメリカン・ハッスル 凄腕の詐欺師コンビのアーヴィン(クリスチャン・ベイル)とシドニー(エイミー・アダムス)はついに捕まってしまう。ところがFBI捜査官のリッチー(ブラッドリー・クーパー)は減刑をエサに彼らにおとり捜査を持ちかけるのだったが、網にかかってきたのは大物政治家のカーマイン市長(ジェレミー・レナー)とマフィアのボスであるヴィクター(ロバート・デ・ニーロ)で…

 米アカデミー10部門ノミネートの、実話を元にした物語。そのせいかどうかは知らないが、冒頭のアーヴィンのカツラからはじまって、シドニーの胸元きわどいドレスとかカーマイン市長のヘアスタイルとか、どーでも良さそうな外見的特徴がずっと強調されていて気になって仕方がなかった。これってきっと実在の人物をイメージしやすくしてるのかな?

 どーでもいいようなストーリーにも思えるんだけど、アーヴィンとリッチーのイカレポンチぶりが目について映画自体は最後まで楽しむことができた。シドニーと、アーヴィンの妻ロザリン(ジェニファー・ローレンス)のお色気対決もしかり。でも軍配は、わーわーわめき立てるロザリンの勝ちかな。

 おとり捜査と司法取引がテーマなので、日本人的感覚からするとどうしても乗り切れない部分がもやもやっと残ります。一番可愛そうなのがカーマイン市長。彼って善人として頑張ってたと思うのだが… 自由の国アメリカってやっぱり怖い、なんて思ってしまいました。

AMERICAN HUSTLE
デヴィッド・O・ラッセル監督。2013年アメリカ映画。

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