JAZZ名盤紹介:マイルス・デイビス『フォア&モア』
このアルバムと出会ったのは確か大学生活の後半、ジャズの勉強するつもりでアルバム100枚を聴こうとしていた頃でした。
1940年代に勃興したビ・バップ革命の中心にいたチャーリー・パーカーを知ることで即興演奏の面白さに気づき、やがてはその弟子にあたる マイルス・デイビスの音楽を耳にするのですが、マイルスはその即興バトルに限界を感じ、テーマに様式美を加えた“ハード・バップ”と呼ばれるスタイルを確立していきました。
マイルスは1960年代に入り、当時10代だったドラム少年のトニー・ウィリアムスと出会うのですが、このトニー・ウィリアムスがとにかくマイルスだけでなく、当時のジャズ・シーン、そして自分にとっても様々な概念を覆すほどの衝撃波だったのです。
それまでのマックス・ローチやアート・ブレイキーのドラムのスタイルとは全く違うトニー・ウィリアムスのスタイルは、リズム・キープではなく、本人曰く“パルスを送り続ける”というスタイルで、他のメンバーを煽りまくり、それはかつてないほどスリリングでした。
車の運転中に大音量で聴くと、どんどんのめりこむように意識を持っていかれて、運転していることを忘れるほど危険な演奏です。
1964年2月ニューヨークのリンカーン・センターでのライブ録音なのですが、全曲収録ではなく、演奏を“静”と“動”で分け、“静”の曲は別のアルバム『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』に収録されております。
そして本作は“動”の方を中心とした曲で構成されたアルバムなので次々と繰り広げられる斬新なスタイルのインター・プレイが特徴です。
30代のマイルスや20歳前後のハービー・ハンコックやロン・カーターが最年少のトニーに煽られ、みんなで新しいモノを作り出そうという意欲がひしひしと伝わります。
ただサックスのジョージ・コールマンだけが、保守的にハード・バップのスタイルを一人のん気に貫いています。

でも逆にそれがこのアルバムを聴き易くしているのは間違いありません。
でもこのジョージ・コールマン、残念ながら10代のトニー・ウィリアムスに古臭い、ダサい等と苛められ、すぐに脱退したそうです。

そしてモンスター、ウェイン・ショーターの加入によって“黄金のクインテット”が誕生するのですが、その誕生前夜的な位置づけとなる本作。
特に1曲目の超高速“ソー・ホワット”から2曲目“ウォーキン”へ怒涛の如く繰り広げられる展開が聴きどころ。
ある意味ハード・ロックよりハードですよ。

じっくり腰を据えて、全集中かつ、できるだけ大音量で浴びるように聴いていただきたい一枚です。
マイルス・デイビス『フォア&モア』は、
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